第二回 シンガポールでの起業方法は?会社設立のステップや条件も徹底解説!


シンガポール起業ガイド連載第1回目は、シンガポールに起業家が集まる理由やシンガポールで起業するメリットやデメリットをご紹介しました。第2回目は、実際にシンガポールで起業する際の申請方法や条件などを詳しく解説します。



シンガポールで起業する目的は?

ひと口に「シンガポールで起業する」と言っても、いくつかのタイプがあります。ここでは、代表的な起業パターンを3つご紹介します。起業家として成功するために、起業の目的と目指す方向性を明確にしましょう。


所属会社からの独立

弁護士や税理士などの士業の方や専門職に多い起業パターンです。講師や広義の意味でのコンサルタントもそれまでの業務経験をベースに行うケースが大半のため、ここに含みます。いわゆる事業会社に勤務されている方が、在職中に培ったノウハウとネットワークを活かして同業種で事業を開始するケースが多いでしょう。


独立やスモールビジネスを目指す場合

「既存市場」の中で、大きな初期投資を必要とせずに起業できる企業体です。既に存在している市場のため、同業他社やライバルが多く存在しますが、顧客ニーズが高く起業がしやすい環境とも捉えることができます。戦略を大きく間違えない限り、開始時から売り上げが立ちやすいと言うメリットもあります。


スタートアップへの挑戦

再現性と拡張性のある新しいビジネスモデルや技術で短期間に急成長し、5〜10年以内に上場か売却で大きな利益が見込める企業体です。これまでにない新しい市場のため、初期の売り上げはゼロか極めて少額というデメリットがあります。一方で、ひとたび市場が確かめられると、一気に急成長するという大きなメリットがあります。


独立やスモールビジネスを目指す方法は?

既にシンガポールで就労している方も、シンガポール国外から新たに起業する方も、独立やスモールビジネスを目指すためには、就労ビザが必要になります。この場合、ほとんどの方が新しく立ち上げる会社から「エンプロイメントパス(Employment Pass、EP)」を出してもらう形になります。

就労ビザを取得するためには、就労ビザを管轄するシンガポール人材開発省(Ministry of Manpower、MOM)の方針を十分に理解して事業計画を練ることが重要です。シンガポール人材開発省(MOM) は、シンガポールに不足している産業分野のナレッジや技術の移転、シンガポール人の雇用を生み出す事業を歓迎しています。「この新しい会社でこの外国人に就労ビザを許可すると、シンガポールにどのような価値がもたらされるのか?」という問いにロジカルに回答できれば、スムーズに就労ビザを習得できるはずです。


スタートアップを目指す方法は?

独自のビジネスモデルや技術で急成長するスタートアップを始める場合、「Entre Pass(エントレパス)」を取得し、事業を進めていく方法があります。Entre Passを取得するには、以下3つのどれかに該当する必要があります。

(1)アントレプレナー(Entrepreneur)
・政府スキーム、または政府認定のエンジェル投資家やベンチャーキャピタルからSGD10万以上の投資を得ていること
・政府指定のインキュベーターやアクセラレーターのプログラムに合格し参加していること
・過去にテックスタートアップの起業・売却経験があること、その他、顕著に起業家としての実績があること

(2)イノベーター(Innovator) 
・IP(知財)保有
・シンガポール政府指定の研究機関や大学等で共同研究をしていること
・科学や技術の分野で顕著な功績があること

(3)インベスター(Investor)
・スケールの期待できる事業に多額の投資をすること
・8年以上、大企業で幹部経験があること

(1)〜(3)は、明確な基準設定がなく解釈が難しい部分がありますので、ご自身が該当するかは、事前に担当省庁に個別に直接確認することをお勧めします。

参考サイト: シンガポール人材開発省庁(MOM)

Entre Passのメリットは、最低給与の指定がないことです。初期資金もほとんどありません。ビジネスアイデアに自信のある方は、政府指定のインキュベーター・アクセラレターのプログラムに応募し合格すること、サイエンスの分野で実績のある方は政府の指定研究機関や大学とコラボレーションすることで、1年間有効なEntre Passを取得することができます。

メリットの多いEntre Passですが、起業2年目以降にパスの更新をするためには、シンガポール人の雇用などの指定条件を満たす必要があります。このため、事業の進捗に応じて、2年目以降はEmployment Pass (EP)に切り替える起業家も多いようです。

しかし、Employment Pass (EP)にも厳格な取得基準が設けられていることが現状です。Entre Passの更新もEmployment Pass (EP)への切り替えのどちらも、シンガポール政府は短期間にある程度の成果をあげる起業家を望んでいると言えるでしょう。


シンガポールで起業できる会社形態は?

シンガポールではさまざまな企業形態で進出できます。ここでは、代表的な企業形態を3つご紹介します。それぞれのメリットとデメリットを熟知して、あなたの起業目的に適した企業形態を選びましょう。


現地法人の設立(Company)

現地法人の設立とは、シンガポールで新たに会社を設立する企業体です。独立した法人格を持ち、営業や販売活動が認められています。法人税17%という低い税率や、さまざまな優遇制度という起業メリットを受けることができるため、シンガポールに進出する起業家が多く選ぶ起業方法です。具体的な会社設立の方法は「シンガポールでの会社設立の方法は?」で詳しく解説します。


シンガポール支店の設立(Branch)

すでに日本で会社を経営している起業家の方は、シンガポールに支店を設立することでシンガポールに進出するという方法もあります。法人格を持っているため、現地法人と同じように営業や販売などの経済活動が認められています。

シンガポールの支店を設立する最大のメリットは、万が一シンガポールの支店で損失が発生しても、日本本社の利益と相殺できることです。一方、日本の本社が経営のすべてを管理しているとみなされているため、シンガポールの居住法人とは認められていません。このため、法人税率などは同じですが、居住法人だけが活用できる新会社設立に対する優遇措置は適用されないことには注意しておきましょう。


駐在員事務所の設立(Representative Office)

駐在員事務所とは、シンガポールでの市場調査などの情報収集活動だけが許されている、独立した法人格を持たない企業体です。最大の特徴は利益を生む営業や販売活動を行えないことです。

駐在員事務所を設立するメリットは、駐在員事務所があることによって就労ビザの取得やシェアオフィスなどの賃貸契約が結べることです。シンガポールのビジネス環境をしっかりと把握してから商売を始めたい起業家の方は検討する価値があるでしょう。


パートナーシップ(Partnership)

パートナーシップとは、 2人以上20人以下の個人や法人で構成された、法人格を持たない企業体です。エンジニアや弁護士、建築家などの専門職の人が事務所を設立する際に多くみられます。パートナーシップに登録できるのは、18歳以上のシンガポール国籍を持つ個人や永住権保持者、Entre Passを保有する外国人そして、シンガポールで登記された法人に限られています。外国人がシンガポールでパートナーシップを設立するには、少なくとも1 人のシンガポールに居住する共同経営者を任命することが必要です。

また、共同経営者が全員外国人の場合、シンガポール居住者を代表者に任命しなければならないと決められています。シンガポールに信頼できるパートナーがいる方や専門職に従事し、シンガポールで事務所を構えたい方は検討しても良いでしょう。


個人事業主(Sole Proprietorship)

個人事業主は、1人の個人または1つの法人から成る、法人格を持たない事業体のことです。シンガポールで個人事業主になることができるのは、シンガポール国籍を持つ個人、永住権保持者、Entre Passを保有する外国人に限定されています。外国人が個人事業主に登録する場合は、少なくとも1人のシンガポール居住者の代表者(シンガポール市民、永住者、EntrePassの保有者)を任命しなければいけないとされています。

また、会社=個人として見なされるため、会社の負債は全て個人の負債となることに注意しましょう。


ビジネストラスト(Business Trust)

ビジネストラストは、企業と信託の2つの要素から成る複合型の企業体です。受託者が受益者(投資家)のために信託財産を保有・管理し、特定の事業目的のために運用します。シンガポールでは、ゴルフ場や不動産ファンドなどの運営でよく見られます。ビジネストラストは、ビジネス・ トラスト法(Business Trust Act)によって規制されており、所轄当局はシンガポール通貨金融庁(MAS)です。


シンガポールでの会社設立の方法は?

ここでは、シンガポールでの会社設立方法や条件を10個のステップに分けて解説します。会社設立の参考にして下さい。


現地を調査し企業形態を決める

シンガポールは、法人税の低さや立地の良さなどさまざまなメリットがあるため、世界の起業家が集まるライバル競争が激しい国です。シンガポールで起業する前にあらかじめ現地調査を行い、ビジネスビジョンに合う形態で起業しましょう。

駐在員事務所を設置して市場調査を行うなど、自社で市場調査をすることも可能ですが、時間やコスト、情報の信頼性を考慮して現地のコンサルティング会社を利用する起業家も多くいます。効率よく現地調査を進めることも起業成功のためには必要でしょう。


会社設立条件を検討する

現地調査を終えて、企業形態を決めたら会社設立の重要事項を決めましょう。シンガポールでの会社設立には主に以下のことを検討する必要があります。

・会社名
会社名を考えましょう。シンガポールでは使用したい会社名をあらかじめ予約する必要があります。詳しくは次の「会社名を予約する」で解説します。

・決算日
決算日は自由に決めることが可能です。

・資本金
シンガポールでの現地法人を設立する場合は、最低$1で設立が可能です。また、資金面では、立ち上げる人の属性(経験値、年齢、その他)と事業の将来性にもよりますが、一般的には、半年から1年程度の運転資金を準備する必要があるでしょう。

・会社住所
会社の住所を決めましょう。登録住所には、シンガポール現地の住所が必要です。

 

会社名を予約する

決定した会社名を予約しましょう。考えた会社名で会社設立が可能かどうかをシンガポール会計企業規制庁(ACRA)が運営するオンラインサイトのBizfile+に申請する必要があります。申請費用は$15です。既存の会社名や禁止されている語や望ましくない単語が含まれていると承認されないこともあるため、いくつか候補を考えておくと良いでしょう。



居住取締役と秘書役を選ぶ

シンガポールで起業するためには、シンガポール居住者の取締役と秘書を少なくとも 1人ずつ任命しなければいけないと決められています。シンガポール居住者とは、18歳以上のシンガポール国籍の保有者、シンガポール永住者、Entre PassまたはEmployment Pass (EP)保有者のことです。居住取締役と秘書は兼任することは認められていないことに注意しましょう。設立したばかりで、居住取締役を任命することが難しい場合は、設立を代行する法律事務所や会計事務所などに代理の居住取締役を依頼することも可能です。


定款を作成する

会社の定款を作成しましょう。会社の定款は、シンガポール会計企業規制庁(ACRA)に登録することが必要です。また、株主が署名した定款を会社に保管しておくように定められてます。定款には、会社名と住所・事業活動と運営方法・株式資本の総額と発行済株式数などを記載します。

定款の作成は、会計企業規制庁(ACRA)が公開している標準定款を活用し、自社で作成する方法や法律事務所や会計事務所などに定款の作成を依頼する方法などがあります。どのような方法で作成するのかは、各々の作成に要する時間やコストを考慮して選びましょう。


Bizfile⁺から会社設立の申請をする

会社設立の準備が整ったら、シンガポール会計企業規制庁(ACRA)のオンラインサイトのBizfile+から申請書を提出しましょう。会社の登録費用は$300です。申請がオンラインで完結し、会社設立の手続きがスムーズなことがシンガポールに起業家たちが集まってくる理由の1つとなっています。


銀行口座を開設する

会社の設立が承認されると、会社名義の銀行口座を開設することができます。金融大国であるシンガポールには、日系銀行のシンガポール支店やシンガポールの地場銀行、グローバル銀行などさまざまな銀行があります。

銀行によって口座開設に必要な書類や手続きの方法が異なっています。また、銀行によって預金プランや融資条件などのメリットやデメリットもさまざまです。事前に問い合わせて担当者の話を聞き、比較しておくことがおすすめです。必要に応じて銀行を使い分けることも視野に入れると良いでしょう。

また、マネーロンダリングや脱税目的での口座開設を防止するために、どの銀行もしっかりとした審査を行ってるため、口座開設には時間を要することを頭に入れておきましょう。


就労ビザを取得する

シンガポールには、Employment Pass (EP)や S Pass、 Entre Passなどさまざまな就労ビザがあります。Entre Passについては、「スタートアップを目指す方法は?」で説明した通り、スタートアップなどを目指す海外の起業家が取得する就労ビザです。

それ以外で、シンガポールで就労する日本人が取得するビザは、Employment Pass(EP)と S パスです。Employment Pass(EP)は、外国人の専門職や経営者、管理職を対象としています。S パスは、中技能熟練労働者を対象としており、一般職または技術職に就く日本人が多く取得しています。

昨今シンガポール政府は、シンガポール人労働者のビジネスにおけるスキル向上に力を入れるため、外国人労働者への就労ビザの取得基準を厳格化しています。現に、2022年9月からEmployment Pass(EP)と S Passの最低給与額が引き上げられることも決まってます。今後、ますます外国人がシンガポールで起業するための規制が厳格化していく現状を把握して、シンガポールへの起業を進めましょう。

主な就労ビザ

種類対象最低給与期限
Employment Pass (EP)専門職や経営者、管理職$4,500(2022年9月1日より段階的な引き上げあり)初回:最高2年 
 S Pass中技能熟練労働者などの
一般職や技術職
$2,500(2022年9月1日より段階的な引き上げあり)最高2年
Entre Passスタートアップなどを目指す外国人起業家なし初回:1年

 

オフィスを準備する

会社の運営のために、オフィスを契約しましょう。シンガポールは、起業のしやすい国で世界のトップに位置していますが、オフィス賃料の高さもトップクラスです。家賃をできるだけ最小限にしたいならば、シェアオフィスやサービスオフィスを検討しても良いかもしれません。

サービスオフィスには、セキュリティーシステムや通信環境が整っているオフィスもあり、家賃以外の初期設備費用を抑えられるメリットもあります。最近では、家で仕事をする在宅勤務も浸透していますので、出勤人数をおさえた最小限のスペースのオフィスを選ぶことも検討しましょう。


人材を採用する

シンガポールでの採用には、求人広告や人材紹介会社を利用する方法があります。シンガポールは、世界の中でも教育レベルが高く、マルチリンガルで優秀な人材が多いことが人材確保をする上でのメリットです。

海外企業との交渉や日本本社と連携を考えている場合でも、語学に堪能な人材に多く出会えるでしょう。但し、シンガポールは給与設定額が高い国であることには注意が必要です。コスト面に配慮して、会社の規模に応じた採用計画をたてましょう。


しっかりとした起業ステップが成功への切符

シンガポールで起業して成功するには、はっきりとしたビジネスビジョンを持ち、どのような企業体で起業するのかを明確に考えておくことが重要です。その上で、会社設立の条件や手続き方法をしっかりと理解して準備しましょう。次回は、シンガポールの起業家のインタビューや起業成功の秘訣などを公開予定です。次回もどうぞご期待ください。


●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
●法人設立の手続き、法人登記、就労ビザの要件や申請方法は、専門サイトを確認し常に最新情報を得ることをお勧めいたします。

この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!