第一回 シンガポールは起業しやすい!ビジネスのしやすさは世界第2位!その理由は?

シンガポールは、ビジネスがしやすく起業しやすい国として世界ランキングの上位に位置しています。シンガポール起業ガイド連載 第一回目は、なぜ数多くの起業家がシンガポールに集まってくるのか、シンガポールで起業するメリットやデメリットなどをふまえて解説します。




起業家が集まるシンガポール

<表1> 
起業のしやすい国ランキング

順位国名
1位ニュージーランド
2位ジョージア
3位カナダ
4位シンガポール共和国
5位香港特別行政区 中国
106位日本

参考資料:Doing Business2020 (World Bank Group)

<表2> 
ビジネスのしやすい国ランキング 

順位国名
1位ニュージーランド
2位シンガポール共和国
3位香港特別行政区 中国
4位デンマーク王国
5位大韓民国
29位日本

参考資料:Doing Business2020 (World Bank Group)

上記の表1と表2が示す通り、世界銀行が発表した世界銀行の国ランキング2020において、シンガポールは起業のしやすさランキングでは第4位、ビジネスをしやすい国ランキングでは第2位にランクインしています。一方、日本は起業しやすい国ランキングは106位、ビジネスをしやすい国ランキングは29位です。シンガポールは起業家にとって、商売がしやすい国であることが伺えます。

このビジネスをしやすい国ランキングは、「起業のしやすさ」、「資産調達」、「海外貿易のしやすさ」などの12の判断基準(表3)で決定されています。起業をするために必要な要件がビジネスしやすい国にはある、と言えるでしょう。

<表3>
What Doing Business measures

指標(対象)
1.   起業のしやすさ(Starting a Business)
2.   建設許可証のとりやすさ(Dealing with construction permits)
3.   電力事情(Getting Electricity)
4.   不動産登記(Registering Property)
5.   資産調達(Getting Credit)
6.   少数投資家の保護(Protecting Minority Investors)
7.   納税のしやすさ(Paying Taxes)
8.   海外貿易のしやすさ(Trading across Borders)
9.   契約の執行(Enforcing Contracts)
10.  破綻処理(Resolving Insolvency)
11.  労働者の雇用(Employing workers)
12.  公的調達(Contracting with the government)

参考資料:Doing Business 2020(World Bank Group)

では次に、シンガポールで起業するメリットをご説明します。


シンガポールで起業するメリット5選

ここでは、シンガポールで起業するメリットを5つご紹介します。

法人設立の手続きがシンプルで、法人登記の条件が厳しくない

シンガポールでの法人設立の手続きは、とてもシンプルです。まずは、社名・会社の事業内容・登録住所・取締役・株主・秘書役・資本金の金額などの会社設立の条件項目を決定します。その後、法人名を申請し、必要書類をそろえて、シンガポール会計企業規制庁(ACRA)にオンラインでの手続きをすれば完了と、迅速かつ簡単です。起業手続きのサービス業者も多く、上手に活用すれば、即日で法人登記することもできます。

また、海外企業が法人登記しやすい条件も魅力です。法人の代表者がシンガポールに居住しない場合は居住取締役を一名選任すればよいという制度や、最低資本金はS$1、業種の規制が少ないことも海外企業が会社を設立しやすいことと深く関係しているでしょう。


税金や資金調達の優遇制度が充実

シンガポールで起業する最大のメリットは、法人税率の低さです。シンガポールの法人税率は最大17%と極めて低いため、シンガポールで起業しやすいと考えられています。これに加えて、いくつもの法人税への優遇税制が導入されていることも特徴です。新スタートアップ会社税額免除制度(Tax Exemption Scheme for New Start-Up Companies)やパイオニア・インセンティブ(Pioneer Certificate Incentive:PC)など、起業を支援する制度が充実しています。制度を利用することで、商売で得た利益をビジネスに反映しやすくなっていることがシンガポールに起業家が集まる理由であると考えられます。

さらに、資金調達のしやすさも魅力です。シンガポールでは特定の業種を除き、ほとんどの業種で外資100%の出資が可能なため、投資家は起業家に投資しやすい環境となっています。また、株式や債券など保有している資産を売却することによって得られる売買差益のキャピタルゲインの税金が非課税であることも、資金調達のしやすさと大きく関係しています。このように、税金や資金という金銭面の手厚いサポートがシンガポールでの起業を後押ししていると言えるでしょう。


優れたインフラ設備と立地の良さ

シンガポールは、ビジネスに最適な環境が整っていることも強みです。シンガポールは、アジア諸国やオセアニアへのアクセスがしやすい場所です。このような優れた立地条件が、販売販路の拡大やグローバル展開をしやすくしていると考えられています。特に、シンガポールの中心部からほど近いハブ空港のチャンギ国際空港は、アジア主要都市や中東への物流拠点として活用できることで世界から注目を集めています。

また、公共交通機関が整っていることも魅力です。国の隅々まで電車やバスが通っており、国内の移動もスムーズです。渋滞に巻き込まれる心配もなく、遅延などでビジネスが滞ることは少ないでしょう。また、Wi-Fiなどの通信環境も世界トップクラスを誇っています。海外企業とのオンライン会議も問題なく行えるため、通信環境に左右されることなく仕事に集中できます。


英語が話せるマルチリンガルで優秀な人材が多い

シンガポールでビジネスをするメリットは、「英語でコミュニケーションができる」こともあげられます。シンガポールの公用語は英語、マレー語、中国語、タミル語です。ほとんどのシンガポール人は英語と複数の言語をネイティブレベルで操ることができるとされています。このため、海外企業との交渉や従業員の雇用などの業務をとても効率的かつ円滑に進めることができるでしょう。

また、シンガポールの教育レベルは、アジアでトップクラスです。複数の言語を操るだけでなく、プログラミングなどさまざまなスキルを持つ優秀な人材は、起業したばかりの時期や事業拡大の際に、大きな戦力になるでしょう。 


日本との安定した関係性

シンガポールは、日本への理解度が高く良好な関係であることもメリットです。シンガポールは日本が初めて経済連携協力協定を締結した国であり、アジア最大の対日投資国でもあります。結びつきが深く、年月をかけて信頼関係を築き上げてきたことから、日本企業の受け入れに寛大であると考えられています。実際、日本の飲食業や小売業は数多くの企業が進出し、昨今では新たにビジネスサービス業の進出も増加しています。

また、シンガポール政府は優れた技術を持つ企業の現地展開の支援にも力を入れており、起業のしやすい条件が整っていると言えるでしょう。


シンガポールで起業するデメリット3選

ここからは、シンガポールで起業するデメリットを3つご紹介します。あらかじめデメリットを知り、シンガポールでのビジネス成功につなげましょう。

家賃が高額

シンガポールで会社を起業する際にネックとなるのは、オフィス賃料の高さです。例えば、東京都港区の事務所賃料は約7,653円(1平方メートル当たり/月額)ですが、シンガポールでは、事務所賃料(1平方メートル当たり/月額)S$86〜136=約6,880円〜約10,880円ととても高額であることが伺えます。

起業したばかりだったり、毎月の固定費をできるだけ抑えて起業したいならば、シェアオフィスやサービスオフィスの活用を視野に入れると良いでしょう。サービスオフィスは、セキュリティシステムや通信環境など便利なサービスが付随しているオフィスが数多くそろっています。また、近年、家で仕事をするいわゆる在宅勤務も浸透しています。賃貸ではなく、時代の流れに沿ったシェアオフィスの活用はシンガポールで商売を続けるために必要な選択肢の1つでしょう。


小さいマーケットに数多くの海外企業が進出している

シンガポールの面積は、約720平方キロメートルと東京23区とほぼ同じです。人口は約569万人(うちシンガポール人・永住者は404万人)で日系企業数は(日本商工会議所登録企業数)805社と数多くの企業が進出しています。日本の人口は1億人以上であるため、人口数に比例してシンガポールの富裕層の数は日本よりも少ないのが現状です。業種によっては、日本の地方で起業する方が効率的である場合もあります。

シンガポールで起業するのであれば、シンガポールの優れたハブ機能を活用するなど、ビジネス戦略をきちんと明確にしてから起業することが必要でしょう。


就労ビザの取得や条件が厳しい

昨今、シンガポールでの就労ビザの取得や更新条件が厳しくなっています。理由は、シンガポール人材開発省(MOM)が、海外からの移住者や起業家に負けない優秀なシンガポール人や永住者を育てることやシンガポール人の雇用を守るという方針を打ち出したからです。2020年9月1日以降、もっとも一般的な就労ビザのエンプロイメントパス(EP)の最低給与は、S$3,600からS$4,500に引き上げられました。また、2020 年 10 月 1 日以降、中技能熟練労働者を対象としているSパスの最低給与は、S$100ドル引き上げられS$2,500ドルとなっています。

シンガポールで起業や雇用を考えるならば、制度改正への迅速な対応や、政府の方針に基づいた対策がシンガポールでの商売を続けていくために必要です。


シンガポールを知り起業する

シンガポールは、法人税の低さや英語が通じるなど、起業のメリットを数多く持つ国です。一方、就労ビザ取得の厳格化などデメリットもあります。シンガポールで起業し成功するには、デメリットを理解し、シンガポールのメリットを最大限生かすことが不可欠でしょう。さて、今後はシンガポールの起業家インタビューやシンガポールでのビジネス成功の秘訣などさまざまな記事を公開予定です。次回の記事もご期待ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
●法人設立の手続き、法人登記、就労ビザの要件や申請方法は、専門サイトを確認し常に最新情報を得ることをお勧めいたします。

この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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