【シンガポール×経済】シンガポール、独立57年の軌跡。1人当たりGDPは日本の2倍近くに到達。

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

8月9日、シンガポールが建国して57周年を迎えた。東京23区あるいは淡路島ほどの大きさの都市国家が荒波の国際情勢のなか生き残り、世界有数の富裕国家となり、コロナ禍という未曾有の危機を乗り切りつつあるなか、意義深い年となったはずだ。

マレーシアから分離独立をした1965年、シンガポールの名目GDPは9億7千万ドルで、マレーシアの29億5千万ドルの3分の1に過ぎなかった。1997年には、シンガポールが1001億ドルに対して、マレーシアは1000億ドルであり、僅かだが逆転した。

2001年から2014年は、原油価格の高騰を背景にマレーシアが上回る状況が続いたが、2015年からは再びシンガポールがマレーシアを上回った。最新の2021年ではシンガポールが3969億ドルに対して、マレーシアが3727億ドルとなっている。6倍ほどの人口規模の差を考えると、シンガポールが検討していると言える。

1人当たり名目GDPでみるとシンガポールとマレーシアの差は大きく、むしろ、日本と比較する方が分かりやすい。シンガポールが1万ドルの大台を突破したのは1989年であり、1991年には日本のほぼ半分程度までに成長した。そして、日本を追い抜いたのは2007年であり、日本の約3万5000ドルに対して、シンガポールは3万9000ドルと1割以上の差を付けた。

2009年には、金融立国が故にリーマンショックの影響を受けて、瞬間風速的にシンガポールが日本を下回るが、2010年以降は一貫してシンガポールが日本を上回り、最新の2021年では日本の3万9000ドルに対して、シンガポールは7万2000ドルと倍近い開きがある。

シンガポールの57年の軌跡はGDPだけで語れるものではないが、最も分かりやすい経済指標を一つとるだけでも、半世紀と少しの間に驚異的な急成長を遂げた国だということが分かる。シンガポールの国の規模が故に日本などとは比較にならないという意見もある。しかし、1人当たりGDPで日本がシンガポールに追い抜かれた2007年の時点から、シンガポールは倍増した一方で、日本は僅か1割しか増えていないという事実にも眼を向けなければならないだろう。

1人当たりGDP シンガポールと日本の比較

 

GDP シンガポールとマレーシアの比較


*2022年8月10日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

クロールアソシエイツ・シンガポール シニアバイスプレジデント

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアや新興国を軸としたマクロ政治経済、財閥ビジネスのグローバル化、医療・ヘルスケア・ビューティー産業、スタートアップエコシステム、ソーシャルメディア事情、危機管理など。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年12月より現職。共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所共同研究員、同志社大学委嘱研究員を兼務。栃木県足利市出身。




この記事を書いた人

SingaLife編集部

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