帰国子女・子育てインタビュー③「帰国子女として公立小に帰ってどうだった?〜関西在住Cさんのケース」
シンガポールに引越しして数年経過すると、親も子どももすっかりシンガポールの環境に馴れて楽しく過ごせるようになります。が、そんなシンガポール生活は永遠ではなく、いつかやってくるのが本帰国の辞令。駐在員の宿命ですね。
帰国するとなると大きな心配事の一つが、子どもの学校に関すること。もともと住んでいた場所に戻るのか、新天地に住むのか、どちらにしても日本は数年ぶりで子どもは日本の学校に馴染めるのか、友達は出来るのか等不安なことが沢山出てきます。
筆者はこれまで何人もお友達を見送りましたが、「学校でいじめられないかな」「馴染めるかな」と心配する親御さんの声を聞きました。
そこで今回は、日本に帰国したCさんと久々にオンラインで話す機会があり、帰国後すぐに馴染めたか、周りの反応について聞かせてもらいました。最初は公立の中学にとの考えだったそうですが、日本で過ごす中で芽生えた中学受験へ興味やきっかけ、決断についてもお話してもらいました。
case3関西圏に住む40代Cさん(日本人学校に通っていた子女のお母様)
帰国した時期とエリア、お子さんの通う学校はどちらですか?
小1の三学期末までシンガポールにいて、その後関西エリアに帰国しました。子どもが渡星するまで住んでいた家の学区の公立小に通い始めました。
帰国する前に住むエリアの情報などを調べましたか?
うちは関西に既に家があり、そこに帰国することが分かっていたのでその点は安心ではありました。新たに新居や学校区をシンガポールの時に調べる必要はなく、もともとの家の近所の知り合いから情報を聞くことができたのは心強かったです。学区内に、海外転勤をする家庭が比較的多いということは聞いていて、その情報は事前に知っていたので安心していた点ではありました。
帰国後すぐの頃の本人の様子は?日本に帰って本人は学校に馴染めましたか?
本人は最初多少緊張もあったかもしれませんが、すぐに慣れた様子でした。先ほど話したように、海外転勤後に住む家庭が近所に比較的多く、帰国子女が学年に数人いるので、学校の方も帰国子女には慣れていたように感じました。
あと、放課後子ども同士で待ち合わせして外で遊んだりできる日本の自由さがとても良かったみたいで、あっという間に日本のスタイルに馴染んでいました。
帰国子女だから、色々クラスメートから言われることを心配していたようですが、心配するようなことは一切なかったようです。ただ、想定内ではありましたが、「英語話してよ」とはよく言われたようです。それは2年経った今でもたまに言われるそうです。
どうしても慣れないと思う点はなかったですか?
学校への通学の距離が徒歩20分と少し長めで、親として少し心配ではありました。登校班があるから大丈夫だろうと思っていましたが、始まってみると不安が大きかったです。
また、気候に慣れるのに思ったより時間がかかりました。最初春に帰国した時にかなり寒いと感じ、常夏の気候との違いに服装を揃えるのに困りました。着込むと逆に汗疹になったり、皮膚トラブルもありました。四季の変化に慣れるのには親子で少しずつ慣らしていったという感じです。
安定した学区エリアで中学受験はするか、しないか?
帰国した当初に中学受験を検討していましたか?
学区内の小中学校の全体的な学力レベルが高いと聞いていて、授業も落ち着いて受けられるからと安心して中学受験はしないつもりでいました。公立に必ず進ませたいという気持ちがあったわけではありませんが、不安要素の少ない中学校だからと、去年くらいまでは自然にそこに進学させる気持ちでいました。
ただ、多くの6年生は中学受験をするらしく、そうなると毎年3年生の終わり頃には周りの話題がもっぱら塾や受験をするかどうかになり、、、しないと決めていましたが、一度考えてみようと中学受験を検討するきっかけになりました。
最終的に中学受験を決意した理由は?
決心した理由は3つあり、1つ目は学校区のレベルが高いことは前々から知ってはいましたが、思っていた以上に高かったことが分かり、公立中学に進んで授業にちゃんとついていけるのか気になるようになってきました。高校受験ではなく中学受験で中高一貫校に入学させた方がうちの子には有利かもしれないと思えてきたからです。
2つ目は、自宅から通える範囲に中高一貫校や大学まで付属している学校がいくつかあるので、中学受験を考える上で選択肢が多いから。
3つ目は帰国子女枠で受験ができる学校があることが分かったからです。動くなら早めがいいだろうと思い、受験対策の学習塾を探し、4年生から入塾して準備を始めることに決めました。
帰国子女が中学受験をするメリットはあると思いますか?
海外を経験してきた子ども達が、その国際的な感覚をまだ持っているうちに、世界に羽ばたくことを見据えた教育を受けられるのが私立の利点かなと思います。当初は公立でもその感覚を持ち続けられるだろうと思っていましたが、子どもから聞いた話では、クラスの帰国子女の児童同士で海外生活時代の話題が出ることもあって、「◯◯の国ではこうだったよ」「日本はやっぱり便利だよね」と話すとのことです。海外での経験を仲間と共有できて、しかも客観的に日本を見るということが日本に居ながらにしてできるのは、私学の方がよりその機会が多いのではないかなと思いました。
もちろん、帰国子女枠という受験方法が一つ増えるから受験をする上でのメリットが大きい側面もありますが、受験後学校に入った後も同じように海外で経験をしてきた生徒とその経験や感覚を分かち合える機会が多いのではないかと思います。
あとこれは余談ですが、同じ小学校の帰国子女のママと私が仲良くさせてもらっていて、色々な感覚が似ているように感じるので、そういった感覚の近しい人に出会える機会が多いのは親子で安心だとも思います。
帰国子女特有の悩みや、今後心配に思うことがあれば教えてください。
公共の場で聞こえてくる英語がよく理解できたり、海外帰りだからこその長所もありますが、日本で育った子よりできないと思う部分もやはりあります。子どもは、国語と体育が苦手で、それはシンガポールにいた時の教育環境もあるのかなと思っています。個性の部分もあるかもしれませんが、幼少期に浴びる日本語の語彙の少なさは、家庭での日本語の会話が私や主人だけといった環境からくる影響もあるかと思います。帰国直後は日本語の聞き間違いが多かったのも気になっていました。体育は、ボールなげや逆上がりなどがうまくできず、帰国してから結構練習しました。国語の語彙については、中学に入るまでに他の子に追い付けるようにしたいと考えています。
シンガポール日本人学校にいて良かったと思うこと、逆に改善してほしい点があれば教えてください。
良かった点は、日本人学校で週3回あった英語の時間です。日本人学校は基本的に日本に帰ってスムーズに子ども達が馴染めるよう日本の学校と同じカリキュラムで学んでいますが、英語や水泳、イマージョン音楽はシンガポール日本人学校独自のカリキュラムです。
英語の授業では単語を覚えたり、書く練習があったりして1年生だったので訳も分からずやっていたところはありましたが、今になってあれを1年でもやってもいてよかったと思いました。それなりの成果が今になって表れてきました。英語のみで授業を受けるので、先生の言っていることは当時半分くらいの理解だったと思いますが、リスニングもあの期間に鍛えられました。1年生を日本人学校で過ごすのとそうでないのとでは、英語力に差が出たのではないかと思います。
一方で課題点を挙げるなら、日本語で英語を教わる授業が一コマもないので、グラマーなどを日本人の先生から学ぶ時間があるとより理解が深まるのではないかと思います。
受験する学校にもよりますが、日本人学校にいても帰国子女枠で受験できるのでそれは最大のメリットですね。あと日本人学校であっても、国際的な感覚が備わったと感じるので、とても有り難いです。
中高大までの一貫校にもし行くことになった場合、受験に代わってさせたいことなどはありますか?
そこまで具体的に考えてなかったのですが、本人が熱中できる何かを見つけて、若い時にしか経験できないことに打ち込んだり、学校の企画やプロジェクトに参加するなど青春を謳歌してほしいと思っています。
公立校に行っても受験勉強だけでなくそういった経験はできると思いますし、本人がやはり中学受験したくないと言えば断念する可能性もあるかもしれません。
ただ、成長していくうちに、日本だけに住んでいる人と違った感覚が自分にあることに気付いた時に、受け皿になるような、その感覚を磨けるような環境を作っておいてあげたいなと思います。今はまだ海外生活で過ごした期間がいかに特別だったか気付いていないと思いますが、幼い頃に身に付いた国際感覚をうまく自分の個性として取り入れてくれたらと願っています。
この記事を書いた人
Natalie
駐在4ヵ国目、2児の母。 日本で旅行情報誌の制作・編集を経て、在住国の海外邦人向け情報誌のライターへ。 お値打ちで美味しいもの、安く手に入る雑貨などを好むプチプラ・ラバー。激辛激甘に目がない。推しのKPOPを聴くこと、ドラマや映画を観ること、ゴミ拾いが趣味。