日本とは大きく異なるシンガポールで出産後の手続き。出生届は大使館とのやりとり

生まれたばかりの赤ちゃんにも大人と同じように長期滞在ビザが必要になります。ビザがないと不法滞在なんてことになることも(人道的な観点からシンガポール政府が違法性を問うことはほぼないとは思いますが、しっかりと手続きをしましょう)。

永住権(PR)保持者以外の日本人の場合、赤ちゃんはSパスやEPに紐づいたDP(家族ビザ)となります。シンガポール政府に滞在ビザ(DP)の発行を申請しなければなりませんが、その手続きがなかなか煩雑です

出産前に揃えることができる書類と出産後でないと入手できない書類とに分かれます。出産前にできることは余裕を持って済ませておくことが重要です。

今回は、出産したあとに必要な手続きについて解説します。



DPを申請するまでの流れ

説明の都合上、DPを申請するまでの流れを逆順で記します。


9)DPを申請して受け取り
8)生まれた赤ちゃんのパスポートを取得
7)赤ちゃんの指名が記載された戸籍謄本を入手
6)出生証明書(和文)を日本の役所に提出
5)出生証明書(英文)を出生証明書(和文)に翻訳
4)出生登録
3)出生証明書(英文)を入手

ーここから下は出産前に準備ー
2)婚姻関係証明書(英文)を入手
1)夫婦の戸籍謄本を入手



上記の流れを大まかに説明しますと、DPを申請するには、パスポートが必要となりますが、パスポートを取得するためには生まれた赤ちゃんの名前が記載された日本の戸籍謄本が必要です。

その戸籍謄本に赤ちゃんの名前を載せるためには、住所もしくは本籍地を置いている市区町村役所に出生証明書(和文)を届け出なければなりません。

ステップ1から順に手続きをします。


出産前に準備しておく書類

上記図の1)と2)は出産を迎える前に準備できるので確実に入手しておきます。

1)戸籍謄本

手続きの全ての始まりは、戸籍謄本の入手から。住民票を日本に置いたままの人はその自治体に、住民票を抜いている人は本籍地がある自治体の役所から取り寄せなければなりません。

電話やメールで問い合わせをして、原本をシンガポールに郵送してもらえるのか、もしくは代理の人の受け取りが可能なのかなどを確認しておく必要があります。

また、戸籍謄本の発行には手数料がかかりますので、その支払い方法についても確認を。原則として発行から3ヶ月以内のものが証明書として有効になりますので、出産予定日から逆算して発行するようにしましょう。

家族や親類、友人などに代理で手続きをしてもらうには、委任状が必要になることもありますので、あらかじめ役所に確認をしておきましょう。


2)婚姻証明書(英文)

戸籍謄本を入手したら、婚姻証明書(英文)を発行してもらいます。発行申請は、タングリンにある在シンガポール日本大使館で行います。

在シンガポール日本大使館ウェブサイト

【必要書類
・夫婦の名前が記載された戸籍謄本(発行から3カ月以内のもの)
・パスポート(夫婦氏名のスペルを確認するため)
・手数料
・証明書発給申請書
→こちらは大使館の窓口でもらえますので、pdfを印刷して持参する必要はありません

※2022年3月現在、新型コロナウイルスの流行のため、大使館の窓口はメールによる予約制になっています。通常よりも時間がかかることが予想されますので、早め早めの予約を。

必要書類を添えて窓口に提出すれば、数日後に発行されるので再度大使館の窓口で受け取りを。

出産前に準備できる手続きは以上になります。これからは出産後にしなければならない手続きになります。


出産後に準備する書類

先ほど記載したように生まれてきた赤ちゃんには42日間有効のスペシャルパスが発行されます(延長することも可能)。

基本的には、この期間内にDPの受け取りまで済ませておかなければなりません(※手続きで数日超過したからといってすぐに不法滞在だ、となることはないと思いますが、期限内に手続きが間に合わないことが予想されるのでしたら、延長申請をしておきましょう)

スペシャルパスの更新申請はこちらから


3)出生証明書(英文)

こちらは出産した病院で発行してもらう書類です。

出産してから退院するまでの間に、病院のスタッフが部屋を訪れるので、Notification of Live Birth(出生証明書)を発行してもらう手続きをします。

Notification of Live Birth(出生証明書)には、生まれた病院名と出産日時、両親の氏名とパスポート番号が記載されています。

子どもの名前に関して
シンガポールで手続きをする場合、出産直後に子どもの氏名(ローマ字表記)を出生証明書に記載しなければなりません。そのため、スムーズな手続きを行うためにも、出産する前に名前を決めておく(漢字表記もローマ字表記も)ことをおすすめします。


4)出生登録

シンガポール政府へ赤ちゃんの出生登録をします。

日本人が出産する際に利用するあろう主な病院には、シンガポール入国管理局(ICA)の出先窓口が設けられており、その窓口で出生登録とスペシャルパスの発行をしてもらえます。

出先窓口一覧(ICAウェブサイトより


【必要書類】
・婚姻証明書(英文)
→2)で入手したもの

・Notification of Live Birth(出生証明書)
→3)で入手したもの

スペシャルパスを取得すれば、病院で行える手続きは全て完了です。次のステップからは、日本大使館とのやり取りになります。


5,6)出生証明書(和文)の入手と提出

和文の出生証明書は日本大使館で発行してもらいます。

・出生証明書(英文)
・出生届
→大使館の窓口に置いてあるので印刷して持参する必要はありません。

この時に提出する出生届に赤ちゃんの氏名の漢字表記を記載しなければなりません。

大使館経由で戸籍がある自治体へ出生届けを郵送して提出することができます。大使館を経由せずに自分で日本の自治体へ郵送することも可能ですが、安全性を考えて大使館に依頼するのが無難でしょう。

郵送で送られた出生届を自治体の担当部署が受け取ると、両親の戸籍に子どもの名前を記載する作業を行います。


7)戸籍謄本

提出してから1ヶ月ほどで、戸籍に赤ちゃんの名前が掲載されます。(自治体によって提出から記載までの時間は大きく変わりますので、確認しておきましょう)

取得する前に、自治体へ赤ちゃんの名前が掲載されたかを確認してから、1)と同じように戸籍謄本の発行を依頼しましょう。

※この際、パスポートの発行以外での各種手続きで戸籍が必要になることもあるので、戸籍謄本は複数枚発行しておくことをおすすめします


8)パスポート申請

戸籍謄本が届けば、DP発行までの手続きのゴールが見えてきたようなもの。パスポート発行の申請手続きを日本大使館で行います。

【必要書類】
・一般旅券発給申請書(子供用)
→大使館の窓口にあるので印刷する必要はありません。

・戸籍謄本原本
→6)で取得した子どもの名前が記載されているもの

・パスポートサイズ写真1枚(縦4.5 cm×横3.5cm)
→自分で撮影したものでも可能

・Certificate of Registration of Birth原本

・手数料



※子どもの写真について
撮影した子どもの写真が適当か不適当か心配な場合は、写真をメール添付して日本大使館に送れば、明らかに不適当であれば、その旨を教えてくれます。

パスポート写真について(日本の外務省)

外務省ウェブサイトより抜粋

パスポートは即日発行されません。申請してから数日後に日本大使館の窓口で受け取ることができます。受け取りの際は赤ちゃん本人も一緒に窓口に行かなければなりませんのでご注意を。


9)DPの申請と受け取り

DPの申請自体は、EP所持者が勤務する会社が行うので、勤務先の担当部署にパスポートのコピーなどの必要種類を提出すれば完了です。

DP受け取りの準備が整ったとの連絡があれば、クラークキーにあるMOM(人材開発省)のオフィスで受け取りします。MOMでは赤ちゃんのDPに添付する写真の撮影を行います。後日、MOMからDPが配送されるので受け取れば全ての手続きは完了となります。


複雑な出産後の手続き… 着実に手続きを進めましょう

シンガポールで出産すると日本とは全く異なる手続きが必要になります。赤ちゃんが生まれる前にできることから着実に進めていきましょう。

必要書類などを調べていると億劫になりがちですが、どれも大事な手続きですので事前準備をするなどして慎重に進めていってくださいね!


●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。



この記事を書いた人

SingaLifeママパパサークル

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