シンガポールの景気が回復しているのはなぜ?徹底解説します!

新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、はや3年目に突入しました。

未曽有の経験に、世界中が困惑し、落胆する中、シンガポール経済が回復を遂げつつあるというニュースが発表されました!コロナ禍なのに、なぜ?と思いますよね。今回はその背景を分かりやすく解説します。




コロナ禍なのにシンガポールの景気が回復している理由とは?

新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、はや3年目となりました。こんなことが起きるなんて・・と誰もがそう思ったに違いありません。世界経済も打撃を受け、特にサプライチェーンの混乱は、さまざまな産業分野に影響を及ぼしています。

そのような中、シンガポールの景気が回復傾向にあることがニュースで発表されました!コロナ禍真っ最中なのに、本当に?と思ってしまいますよね。

シンガポール貿易産業省(MTI)は、このほど2021年の実質国内総生産(GDP、確報値)が前年比で7.6%増加したと発表しました。1月初旬に発表した速報値では7.2%でしたが、上方修正されました。この7.6%という数字ですが、シンガポールの経済にとっては、11年ぶりの好調な数字だそうです。というのも、リーマン・ショック後に経済が回復した2010年に、14.5%という成長率になったのですが、それ以来のできごとだそうです。

新型コロナウイルス感染症の流行が拡大した2020年。シンガポールのGDPはマイナス5.4%まで落ち込んでしまいました。これは、1965年の建国以来、最低の成長率だそうで、シンガポール経済は大打撃を受けました。そこから、2021年のシンガポール経済はプラス成長を見せたのですが、いったいなぜでしょうか?

実は、その大きな理由として、製造業の輸出が前年比で13.2%増加したことが挙げられます。シンガポール経済の回復に大きく貢献している「製造業」とは具体的にどんなものでしょうか?


GDP成長率を後押しした産業とは?



成長した産業の背景について

2020年のシンガポールのGDPは、前年比で7.6%増加したとのことですが、それを後押しした産業として、まず初めに「製造業」が挙げられます。GDPの分野別では、製造業は22.3%と第1位を占め、前年比でも12.8%増加しました。実はもともとシンガポールは製造業が盛んな国として知られていますが、これはマレーシアからの独立によって、新たな市場を自ら開拓する必要に迫られた結果とも言えます。

独立後には、シンガポールは、輸入から自国への工場誘致を進め、その後は海外への輸出を促進する政策を取ってきました。

また、製造業の内訳としては、建国当初は、海外資本の工場で、電気・電子部品の製造が中心でしたが、1979年あたりからは、IT・金融・ソフトウェア開発などの高度な産業に構造変化していきます。さらにその後、エレクトロニクスやITといった付加価値の高い分野の製造業が発展していきました。さらに1990年以降は、研究開発に資金が集められ、有能な人材が集まるビジネス拠点が作られるようになりました。まさに、シンガポールの建国の歴史とともに製造業が発展してきたと言えますね。

そして、2020年のGDP成長を後押しした製造業の中でも、半導体関連の輸出は、シンガポール経済の回復に大きな貢献をしました

ご存じのように、コロナ禍により、工場の操業停止や物流の停滞が起こり、世界的なサプライチェーンの混乱が生じました。一方で、コロナ禍はテレワークの増加や巣ごもり需要の高まりから、半導体が不可欠なパソコンやゲーム機などの製造が急増し、世界的な半導体不足に陥ったのです。こうした状況を背景に、シンガポールから半導体関連の輸出が急増しました。そのほか、2020年のGDP分野では、バイオメディカル関連や交通工学分野の製造業で高い成長率を打ち出しています。

さらに、シンガポールのGDP成長を後押しした産業分野としては、建設業が前年比で18.7%の増加サービス業も前年比で5.2%増加しました。建設業は、まだ本格的な復活は遂げていないのですが、公共・民間事業の建設需要が増加しているようです。サービス業は、観光業に関連するサービスはまだ低迷しているため、全体としては微増です。

シンガポール貿易産業省(MTI)は、2022年のGDP成長率は3~5%と予測しており、2021年11月に発表した予測値と変わっていません。同省のガブリエル・リム次官は、会見で、2022年も新型コロナウイルスの長期化がもたらす影響や、サプライチェーンの混乱、ウクライナ危機など、世界経済に対するリスク要因があることを述べています。

また、シンガポール経済で言えば、製造業は引き続き堅調が続くものの、観光、航空、飲食、建設といったサービス分野は、2022年も低迷が続き、コロナ前の水準には戻らないとの見通しも出ているようです。

楽観視はできないものの、世界各国が経済の立て直しに苦心する中、シンガポールの経済は回復に向かっていることは事実であり、建国とともに成長を目指してきた製造業が、経済成長の重要な役割を担っていることが分かりますね。


シンガポールのGDPデータ

皆さんは、普段の生活の中で、GDPのデータをじっくり見るということはそう多くはないですよね?特に統計データなどは細かくて、数字を見るだけでちょっと… という方も多いかと思います。そんな方に、ぜひ見ていただきたいのが、シンガポール統計局のサイトです!分かりやすいアニメーションでさまざまなデータが表示されており、一気に親しみやすくなります。こうした「伝わる」工夫は、とても大切ですよね。

さて、そんなシンガポールのGDPデータですが、このたび発表された2020年のGDPに関する情報をいくつかご紹介しましょう。

まず、国別の豊かさの目安と言われる「1人当たり名目GDP」は、97,798シンガポールドル(日本円で約830万円・注1)だそうです。日本はというと… 4万48アメリカドル(日本円で約428万円・注2)とのことで、その差に驚きます!また、2020年の名目GDPの内訳としては、個人消費率が31.5%、純輸出が31.9%、設備投資が23.6%、政府支出が11.8%となっています。

さらに、シンガポールから海外への直接投資先としては、ダントツで中国、続いてオランダ、インドとなっています。逆に、シンガポールに直接投資する額が大きい国としては、アメリカ、ケイマン諸島、イギリス領ヴァージン諸島、そして日本といった順位になっています。投資先第2位のケイマン諸島とは、キューバの下にある、人口約70,000人の島で、ダイビングなどの観光業が盛んな国だそうです。タックス・ヘイブン(租税回避地)としても知られていますね。

数字から分かるシンガポールの今、ぜひ知識を深めていきたいですね!

(注1)2022年2月下旬の為替レートに基づく
(注2)2020年度「国民経済計算年次推計」(内閣府発表)に基づく


ポスト・コロナを見据えて動き始めたシンガポール経済

ウイルスに翻弄される日々は続きますが、経済回復の突破口を見つけようと、世界各国でも努力が続けられています。2022年の1月1日には、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)が始まり、シンガポールも積極的にこの協定を活用して、貿易を拡大したい考えだそうです。すでに、ポスト・コロナを見据えて、「シンガポールの経済を取り戻したい」という国の強い思いが感じられますね!

一方で、シンガポールのローレンス・ウォン財務相は2022年の予算演説で、2023年から消費税率を、現行の7%から8%に引き上げると表明しました。さらに2024年には9%まで引き上げるそうです!高額所得者、住宅不動産、高級車への税率も引き上げられるそうで、経済回復を見据えたアクションも早いですね。とはいえ、暮らしにも少し影響が出そうではありますが…!

変化のスピードが速いシンガポール経済を、これからも注目していきたいと思います。


シンガポールの最新情報は、YouTube「SingaLife TV」をチェック!

以上、今回は「シンガポールの景気が回復しているのはなぜ?徹底解説します!」についてご紹介しました。

世界を取り巻く状況は、決して穏やかではありませんが、シンガポールは自国の強みを活かしながら、次の一手を素早く打とうとしているようです。このウイルスとの闘いもいつかは終わります。その時にすぐスタートできるように、力を蓄えたいですね!

尚、今回の内容は「SingaLife TV」でも詳しくお伝えしています。シンガポールの最新情報をお届けしているユニークなYoTube番組。ぜひ、ご視聴とチャンネル登録をよろしくお願いいたします!名物MC・イモキンさんのトークも必見です!


この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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