【2024年版】シンガポールの祝日ハリラヤプアサとは?イスラム教徒にとってのお正月をご紹介!

シンガポールの人口の約13%を占めるマレー系の人々のほとんどがイスラム教徒。彼らはイスラムの厳格な教えを守りながら生活しています。そこで今回は、シンガポールに住むマレー系イスラム教徒の神聖なラマダンの断食明けを祝うハリラヤプアサについてお伝えします!

イスラム教の祝日、ハリラヤプアサとは?

「ハリラヤプアサ」は、ラマダン(断食)明けを祝うイスラム教における最大のお祭りです。この日、シンガポールは祝日でお休みになります。ハリラヤアイディルフィトリとも呼ばれることがあります。

2024年のハリラヤプアサは、4月10日です。ヒジュラ歴(イスラム歴)に準じており日付は毎年変更されるので注意しましょう。この日はイスラム教徒の大切な宗教行事”ラマダン”に関係しています。

ラマダンとは?

ラマダンとはイスラム歴の第9月に約1か月間行う断食のことで、この期間イスラム教徒は日の出から日没まで飲食せず神の恵みに感謝します。

この期間は食べ物だけでなく水分の摂取も禁じられていますが、日の出前にしっかり水分を取り脱水症状にならないように気を付けています。日没後は1日分の食事を摂取できるので夜食が盛大になり、食費がかさんだり太ってしまう人も!

断食のレベルにも差があり、日中は自分の唾液すら飲み込まない人もいれば、重病人や高齢者、妊婦や乳幼児は断食を免除されることもあるそうです。

ただ、ラマダンの目的は単に食事を断つことだけではなく、この期間にさまざまな欲望を抑え、自身の信仰心を深めることが本来の目的とされています。イスラム教徒にとって断食明けが一番の祝日となり、厳しいラマダンを終えたことを盛大にお祝いする「ハリラヤプアサ」のお祭りが行われるのです。

※各国で日付や呼び方が異なります。

 

ナイトマーケットでラマダン明けの準備!

シンガポールのマレー地区として知られるゲイラン地区は、ラマダンの時期にだけ開催されるナイトマーケットで大賑わいです。ラマダン期間中は毎晩開催され、宗教を問わずたくさんの人が立ち寄ります。

昔ながらのマレー風屋台からインド風、トルコ風、おしゃれなスイーツの屋台など多数出店し、絨毯やカーテン、クッションカバー、アクセサリーなどさまざまな商品も販売されます。ここで衣服を新調したり調度品を揃えたり、お祝いのお菓子を買ったりして、ハリラヤ当日を迎えるための準備をします。家中の大掃除、飾り付け、贈り物や食料品の買い出しなどを終えてハリラヤを迎える様子は、日本のお正月を迎える準備にも似ています。

華やかなハリラヤライトアップ

ラマダンの開始に伴い、毎年行われているのが「ハリラヤライトアップ」。シンガポール最大、最古のイスラム寺院「サルタンモスク」のあるアラブストリート周辺や、ゲイラン・セライ周辺が華やかにライトアップされ、キラキラ光るイルミネーションは見ているだけでワクワクします!

ハリラヤライトアップのセレモニー期間中は、多彩な文化のパフォーマンスも行われます。



伝統行事ハリラヤプアサの当日の服装や過ごし方

お祝いの正装

ハリラヤプアサ当日、男性は「バジュ・ムラユ」と呼ばれるゆったりとしたシャツにズボンを、女性はロング丈のブラウスとスカートを組み合わせた「バジュ・クロン」と呼ばれるマレーシアの伝統衣装を着ます。

イスラム教徒は肌の露出や体のラインを出すことがよくないとされているため、袖や裾ともに丈が長く全体的にゆったりとしたデザインになっています。シルクやバティックと呼ばれるマレーシアのろうけつ染め布地で仕立てられており、デザインも豊富!何もついていないシンプルなものからビーズなど装飾品があしらわれているもの、カラフルな色合いのものや繊細な刺繍が特徴的なものまでさまざまです。

シンガポールのマレー系の多くは同系色の衣服を新調して着用します。衣装を新調することも、ハリラヤプアサを迎える楽しみの一つです。

ハリラヤプアサの過ごし方

当日はモスクの訪問から始まり、イスラム教徒はこの日のために新調した伝統衣装を着て、モスク周辺で参拝を行い特別な祈りを復唱します。多くのマレー系シンガポール人はイスラム教を信仰し、シンガポールにはさまざまなモスクがあります。

モスクでの参拝を終えたイスラム教徒は両親を訪問。その年の悪い行いに対して、年長者に許しを求めるのが伝統になっています。さらに親戚や友人宅を訪問し、行く先々でおしゃべりとご馳走を楽しみます。

家族を大切にするマレー系ファミリーは親族が一堂に会する大切な日に、お祝いのお菓子や手作りのご馳走を用意してハリラヤプアサを迎えます。



祝賀の食卓

ハリラヤプアサの食卓では、牛肉をココナッツミルクなどで煮込んだルンダン(rendang)やココナッツの葉で包んだ餅のようなクトゥパット(ketupat)、スパイシーな野菜カレースープに、ご飯の団子を浮かべたロントン(longtong)などの料理が並びます。

まず、ハリラヤプアサに欠かせないのがクトゥパット。クトゥパットはインドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、フィリピンといった東南アジア島嶼部で広く日常的に食べられています。ヤシの葉やココナッツの葉を編み込んだ入れ物にお米を入れて蒸した、マレー風のちまき。何も味をつけない地方もあればココナッツミルクや塩で味付けをする地方もあり、普段から料理の付け合せとして食べられています。

ルンダンは数種の香辛料や香味野菜、ハーブやココナッツミルクを使ってじっくりと煮込んだ家庭料理。豚肉を禁忌とするイスラム教徒は牛肉を使います。「世界で一番おいしい料理」に選ばれたこともあるルンダンは、スパイスの旨味と長時間煮込んだ柔らかいお肉でご飯が何杯でも食べられそう!

ロントンはマレー風スープカレー雑炊。バナナリーフにお米を詰めてつくるロントンとさまざまな野菜を、カレーパウダーとココナッツミルクで味付けしたスープに入れて煮込みます。唐辛子、にんにく、レモングラスなどの香辛料の香りとココナツミルク多めで甘さが特徴です。

 

イスラム教徒以外の人もお祝いできる?

食のありがたさを知ったり、感謝の気持ちを仲間とともに再認識したりすることでイスラム教徒ではない人もハリラヤプアサのお祝いをすることができます。シンガポールのような多国籍国家では、異なる信念を持つ人々がお互いの文化を理解し、尊重することが共生には必要です。

過度に気にする必要はありませんが、イスラム教の友人や同僚の断食中に公然と食事を取ることを避けたり、イスラム教の習慣に関心を持ったりすることもお互い理解を深めることに繋がります。また、日常からホーカーやフードコートでトレイの返却などハラール食の取り扱いルールを守ることや、イスラム教の基本的な教えや文化について学ぶことも、互いに尊重し合う第一歩になります。

ハリラヤプアサをはじめ、多国籍国家シンガポールには、異なる信念を持つ人々がそれぞれの文化を理解し互いに尊重し親交を深める機会が多くあります。まずは、ハリラヤライトアップを見にゲイラン地区に出かけてみて雰囲気を体感してみてはいかがでしょうか!


シンガポールで息づく古き良きマレー文化

約1か月にもおよぶ断食の終わりを祝うハリラヤプアサですが、ラマダン期間中は飲食だけでなくあらゆる世俗的な私利私欲を捨てなければなりません。自身を清めて信仰心を強める期間がラマダンです。

また貧しい人々への寄付を募ったり、恵まれない人々に日没後の夕食をごちそうしたりします。食のありがたさを知り、感謝の気持ちを仲間とともに再認識します。マレーの文化と習慣を代表するものとして、最も重要な行事であることは間違いありません。

多民族国家であるシンガポール。それゆえにさまざまな文化や習慣に触れる機会がたくさんありますね。それぞれの民族がお互いの文化を尊重し理解する、とても素敵な国です。イスラム文化を肌で感じながら学ぶことができるハリラヤプアサを、みんなでお祝いしましょう!



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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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