EPビザ取得のための新ポイント制度「COMPASS」が2023年9月から導入予定

2023年9月から導入されるEP取得のための新ポイント制度「COMPASS」について2022年12月にアップデートがありました。2022年4月の記事に加え、給与の業界ベンチマークの詳細についてのアップデート情報を詳しく紹介していきます。
先日のEPビザ取得に際する最低給与額の引き上げの発表とともに、人材省(以降MOM)は、2023年9月より新たなポイント制度を導入することを明らかにしました。外国人がシンガポールで働くことへのハードルがどんどん上がっているシンガポール。今回は、この新しいポイント制度について、詳しく解説します。
今回のEPビザについての追加施策、一体なぜ?
政府は、これまでのEP申請は透明性が課題であり、全ての申請に対して平等で透明な審査をするために明確な基準を設けることになったとしています。また、タン人材開発相は、スキルを持った外国人労働者は引き続き歓迎しつつも、国籍の多様性を重んじる職場環境づくりにより、今後さらなるローカル人材の育成や雇用創出に期待していると述べました。
COMPASSの項目
今回、MOMが発表した新ポイント制度は「COMPASS」と呼ばれるものです。これは、Complementarity Assessment Framework(相補的な評価を行う枠組み)の略語で、給与水準やスキルといった個人属性項目と、国籍の多様性やローカル人材へのサポートなどの企業属性項目で構成されています。候補者は、このCOMPASSの項目から40ポイントを上回らなければなりません。
新規EPビザ申請について今年2023年9月1日から、更新の場合は来年2024年9月1日から適応されます。MOMのホームページによると、詳しい項目は以下の通りです。
個人属性 | 企業属性 |
C1.給与(20ポイント満点) | C3.多様性(今回の雇用で企業内の国籍の多様性を助長できるか)20ポイント満点 |
C2.スキル(20ポイント満点) | C4.ローカル人材の割合(20ポイント満点) |
また、上記に加え、該当する場合は以下のボーナス項目も加味されポイントが付与されます。
C5.スキルボーナス | C6.優先的な経済施策への関与 |
国内で不足しているスキル(例:人工知能・サイバーセキュリティなど)を保持しているかどうか(20ポイント満点) | 政府機関と共同で推進されるプロジェクトへの関与、または国際組織を目指している(10ポイント満点) |
付与されるポイント数
それぞれの項目に対し、期待を上回る、期待に見合う、期待に見合わないの3評価でポイント数が変わります。詳細は、それぞれ以下のとおりです。
ポイント数 | 評価 |
20 | 期待を上回る |
10 | 期待に見合う |
0 | 期待に見合わない |
すべての項目で満点の場合は、合計110ポイントとなります。ボーナス項目を除くと4つの項目になりますが、それぞれで「期待に見合う」の評価があった場合はその時点で40ポイントとなりますのでEPビザ水準に達することになります。一方で、いずれかの項目で0の評価があった場合も、その他の分野で期待を上回る評価でカバーしたり、ボーナス項目を加味することができます。
詳しい評価基準について
これらの評価はどのようになされるのでしょうか。それぞれの項目において、候補者がどのくらいの割合に到達しているのかによってポイント数が異なります。実際に見ていきましょう。
まず、「Ⅽ1」給与の第一条件としては、現状通りMOMホームページから自己診断できる「SAT(Self- Assesment Tool)に表示される最低給与基準を満たしていることが前提となります。その上で、先日MOMより発表のあった業界別ベンチマーク(詳細はこちら)を満たすことにより、ポイントを獲得できる仕組みとなります。 企業の業界については、ACRA(シンガポール会計企業規制庁)への登録をもとに22種類に分類されます。なお、こちらのベンチマークは毎年3月に更新される予定で、同年の9月1日以降に提出されるEP申請に適用されます。次回の更新は2023年3月の予定で、9月の新規導入時にはそちらのベンチマークが適用される予定です。 EP候補者の予定給与額が、PMETの平均としたときに90パーセンタイル以上の場合は20ポイント、65~90パーセンタイルの場合は10ポイント、それ以下の場合は0ポイント、といった形になります。 ご自身の比較水準を確認したい場合はMOMのこちらをご覧ください。 |
次に、「C2」スキルについてです。 候補者のスキルは一流機関(※シンガポールの国立大学や世界トップ100位以内の大学、ある特定の分野に特化している大学)卒業で20ポイント、学位同等の最終学歴で10ポイント、それ以外で0ポイントとなります。 詳細はこちらをご覧ください。 |
3つ目の項目「C3」である職場における国籍の多様性については、候補者の国籍が同企業内の既存PMETの国籍の5%未満の場合は20ポイント、5~25%の場合は10ポイント、それ以上の場合は0ポイントとなります。(従業員のうち、PMETが占める割合が25%未満の場合は、自動的に10ポイントが付与されます) なお、MOMからのアップデートにより、国籍別の在籍人数の確認についてはmyMOM Portal上でより素早く正確な数値が確認できるようになりました。 |
「C4」ローカル人材の割合については、候補者が配属予定の企業における従業員のlocalPMETの割合を、同業他社と比較したときの比率によってポイントが決まります。 50パーセンタイル以上の場合は20ポイント、20~50パーセンタイルの場合は10ポイント、それ以下の場合は0ポイントとなります。 今までは同業他社との比較、という不明瞭かつ獲得ポイントの想定もつきにくかったかと思いますが、こちらもmyMOM Portal上でポイント数が確認できるようになりました。 確認手順はⅭ3項目と同様、COMPASSを使ってmyMOM Portalへログインして行います。 |
なお、C3、C4の項目については、PMET※が25名以下の企業に関しては自動的に10ポイントずつ付与される仕組みとなります。このため、上記「Local PMETs」の同業他社との比率比較が上位50パーセンタイル以内であった場合でも、PMET人数が25名以下の場合は10ポイントのみの付与となります。
※PMET=Professionals, Managers, Executives and Technicians の略
その他、ボーナスポイント付与に関する詳細はこちらをご確認ください。
COMPASSから除外される例外について
以下のいずれかに該当する場合は、例外として扱われCOMPASSの審査はありません。
・月収22,500シンガポールドルまたはそれ以上の場合 ・企業内転勤(ICT)を利用した異動の場合 ・または、1か月未満の短期雇用の場合 |
想定される影響
MOMは、本施策はEP取得を難しくするものではなく、これまでの申請基準をクリアしてきた人のほとんどは変わらず取得が可能だとしています。一方で、これまで以上の明確な基準が設けられたことにより、一つひとつの申請にさらなる透明性が求められることになります。また特にローカル人材の割合の基準も明確化されたことにより、企業は各々の対策を取る必要が出てくるでしょう。
このように、今年9月以降は新規EPビザの取得は難しくなり、雇用のハードルが上がるでしょう。また、場合によっては従業員の構造改革、または今まで以上の現地化などを進めることを余儀なくされることが予想されます。
今年の9月までは、あと半年ほどしかなく、あまり猶予がありません。なるべく早い段階で将来の人員計画について検討、準備をしておくに越したことはありません。
最後に
今回は、先週発表されたEPビザの発給に関する追加施策「COMPASS」制度の導入について詳しくお届けしました。これまでに他国では既にこのようなポイント制度が採用されている国はありましたが、シンガポールでの導入、及びここまで大きなビザ申請制度の改定は初めてです。
2020年以降、3度目となる今回のビザ発給要件改定。外国人の就労を規制しつつ、ローカル人材との協業を通して経済成長を図っていくシンガポール。お困りのことがあれば、リーラコーエンシンガポールまでお問い合わせくださいませ。
また、本情報は2023年2月現在の情報です。施行に向けてアップデートも予定されていますので、最新の情報についてはMOMのホームページをご確認ください。
※本記事はリーラコーエンよりご寄稿いただいたものです。
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この記事を書いた人
SingaLife編集部
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