【グローバル×マクロ経済】先進国と中国・インド主導で回復する世界経済、ASEANは2022年から本格回復

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

国際通貨基金(IMF)は10月12日、世界経済見通し(World Economic Outlook、WEO)を発表した。

IMFのWEOは毎年4月と10月に最新見通しが発表され、世界が注目する経済予想だ。金融機関やシンクタンクなどもIMFのレポートをベースに独自の予測をしていくことが多い。

今後の見通しについて前年比で、2021年は+5.9%、2022年は+4.9%と予想された。2020年は新型コロナの影響で-3.1%だったが、今年は回復に向かい来年は通常通りという予想だと解釈出来る。先進国のうち、米国の景気は2020年の-3.4%からは脱し、2021年は+5.2%、2022年は+4.5%と非常に力強い。ユーロ圏も2020年の-6.3%という大幅な落ち込みから、2021年は+5.0%、2022年は+4.3%と好調が予想される。

これに対して、日本は2020年の-4.6%から2021年は+2.4%、2022年は+3.2%が予想され、他の先進国に比べると、ややスローペースだ。

では、新興アジアはどうか。今回の予想でも、中国とインドの重要性が浮き彫りになった。中国はコロナ禍にあっても2020年は+2.3%とプラス成長を維持した数少ない国であり、2021年は+8.0%、2022年は+5.6%が予想されている。インドは、一時期は新型コロナウイルス感染による打撃が強く危惧されたが、2021年は+9.5%、2022年は+8.5%と高成長の見込みだ。

そうしたなか、ASEANはどうだろうか。マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムのASEAN5は全体で2021年は+2.9%であり、やや弱い回復だ。一部の国でのコロナ対策の遅れが響いた格好だ。国別でみると、ASEANのなかでは2021年はベトナムが+3.8%と最も高い回復が予測され、続いてマレーシアが+3.5%、フィリピンとインドネシアが+3.2%と予想される。タイは1.0%とどうにかプラスに戻すという状況だ。2022年に入ると、ベトナムは+6.6%、インドネシアは+5.9%、フィリピンは+6.3%と従来の高成長が予想され、ASEAN全体の本格的な回復は2022年からだ。

最後にASEANでも先進国扱いのシンガポールについては、2021年は+6.0%と、2020年の-5.4%から反発して回復起動に乗っており、2022年は+3.2%とコロナ禍前の水準が戻ると予想される。

アジア主要国の経済成長見通し(IMF予想)

※注:インドは2021年以降が予想値、その他は2020年以降が予想値
出所)International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2021より筆者作成

*2021年10月26日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

クロールアソシエイツ・シンガポール シニアバイスプレジデント

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアや新興国を軸としたマクロ政治経済、財閥ビジネスのグローバル化、医療・ヘルスケア・ビューティー産業、スタートアップエコシステム、ソーシャルメディア事情、危機管理など。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年12月より現職。共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所共同研究員、同志社大学委嘱研究員を兼務。栃木県足利市出身。



この記事を書いた人

SingaLife編集部