ソムリエコラム Vol.1 ~自宅でのワインの楽しみ方~
在宅ワインの楽しみ方をお教えいたします!
ソムリエは普段から高いワインを飲んでいる、と思われがちですがそれは誤解です。人によりますが、私はむしろ低価格帯からコスパの良いワインを探すのが好きな方です。
誰もが知る有名ソムリエは、安いワインを多く飲むことでいわゆる高級ワインとの価値の差も分かるし、何より自分の好みを分析できる、とかつて仰っていたようです。私もそれに倣い、肩ひじ張らずに美味しいワインを探す様にしています。
ずっと家に閉じこもりっぱなしで自粛疲れの方々にとって、お家での晩酌は仕事後の、そして休日の癒しではないでしょうか。レストランでの食事は料理はもちろん、雰囲気やサービスも含めて素晴らしいものでしょうが、次に行けるのはいったいいつになることやら…そんな皆さんに、私なりの在宅ワインの楽しみ方をお教えしたいと思います。
フレンチ・イタリアン・スペイン料理など様々な国の料理を自宅で楽しめる便利なデリバリーですが、この期間は随分と助けられました。しかもそのおかげで、ストレスのたまる自粛生活も、なんとか乗り切ることが出来ています。
皆さんも色々な国へ旅行した経験があるかと思いますが、デリバリーした料理と同じ国のワインを飲みながら、当時撮った綺麗な風景の写真やSNSのレストラン投稿などを見返せば、家に居ながらにして雰囲気を感じられると思います。ワイン産地を訪れたことのある方でしたら、その地域のワインを飲むことで一層深く味わえるのではないでしょうか?
実はこれソムリエがよく使うテクニックで、お客様との会話から思い出にまつわるワインを引き出して、サプライズとしてお持ちしたりします。さらに凄い人だと、さりげなくテーブルの横を通ったときに聞こえた言葉を紡いで、ワインを選ぶヒントにしちゃいます。そうした思い出のワインは必ずしも値段が高いわけではなく、旅先で偶然出会うからこそ、その一本に価値があります。その一本を一緒に探すお手伝いをするのがソムリエであり、お客様の好みを知る為に日々色々なワインを飲むわけです。
私は可能な限りワイン生産国へ旅行へ行くことにしており、最近ではスペインのバルでがぶ飲みしたワインが忘れられません。足の踏み場もないほどギュウギュウに溢れかえっているバルでは、なんとかカウンターに手をのばし、ワインとタパスを受け取ります。隣のおじさんが食べているものを指して、片言のスペイン語で「同じの!」と叫ぶと、横のおじさんも何故か嬉しそうに微笑みます。そして言葉も通じないのに一緒に飲み始める、そんな雰囲気が大好きです。
スペインのバルでは小料理の他にも、缶詰をそのまま出すことはよくあることで、缶詰の種類は500以上とも言われています。今週末は現地で買い込んだシンガポール人なら絶対に気に入るマテ貝の缶詰とスペインの白“Albariño”で、あの時の気分に浸ります。バル気分を出すのに敢えて部屋の隅で飲んでもいいかも(笑)皆さんならどこで飲んだワインを思い出しますか?住んでいた国、旅の途中で出会った街、色々あると思いますが、是非思い出のワインを探してみて下さい。
Wine Tasting
Albariño 2018 PAZO de San MAURO
産地はスペインのリアス・バイシャス。
生産者はPAZO de San MAURO
ブドウはAlbariño、nの上に~がついて、アルバリーニョと発音します。
アルバリーニョ、発音は面白いけど覚えづらい…
このリアス・バイシャスという産地ですが、もしかしたら聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか?リアス…リアス……そう、リアス式海岸(リアス海岸)の名前の由来となったとされる、入り江が多いのが特徴的のスペイン北西の海沿いの地方です。地理や歴史など小・中学生の頃は苦手な社会科でしたが、ワイン目線で考えると本当に簡単に覚えられてしまうんですよね。
<外観>
中程度のレモンイエロー(なんか専門用語っぽくてわかりにくいですよね…)。表面では光がキラキラ反射しています。
<香り>
第一印象ですが、グラスから大きく吸い込むと、甘酸っぱい香りが鼻の中に広がります。
まずは何といっても瑞々しい白桃がこのブドウAlbariñoの特徴。本によっては強烈な桃の香りと書かれたりしますが、このワインからはとてもフレッシュで日本の白桃のようなイメージがつかめます。
続いてマンダリンオレンジの皮、フレッシュなグレープフルーツ、完熟レモン、そしてビーチを思わせるような白い砂浜の香り。
加えて、ちょっとした蜂蜜の香りや、人によってはバブルガムともとられる独特なニュアンス。
<味>
口に含んだ第一印象は、酸味がしっかりしたドライなワインで香り同様フレッシュな飲み心地。口に含むとワインの温度が上がり、より多くの香りが出てきます。
特にフレッシュなハーブ(主張しないこれはセージでしょうか)がゆっくりと漂います。そして面白いことにコタツで食べる冬みかんが一瞬頭をよぎります。
香りからは掴めませんでしたが、口に含むと結構ミネラル感もあり、塩味すら感じます。余韻は中程度で、飲み込んだ瞬間から次の一口が欲しくなってしまいます。ボディは比較的軽めでスイスイ入ってきます。おそらく塩味を強く感じる為でしょうか、日本文化に慣れている人にはたまらない一本です。
<総評>
アルコールは比較的低めの12.5%ですし、白桃の香りなども特徴的なので、割と女性好みのワインだと思います。私だったら女性や若いカップルにお勧めしたいです。Albariñoからのワインは比較的低価格帯のものが多く、これなら安心して頼めますよね。そういったところも高評価です。私個人も好きなワインです。
フレッシュな香りが特徴のこのワインですが、香りを活かすよりは酸味が強めなので、口元の狭い、いわゆるリースリンググラスがお勧めです。そうすることで酸味が和らぎ、酸っぱいワインは苦手という方にも飲みやすく感じると思います。人は酸味を舌の両サイドで感じやすい為、口元を狭くすることで両サイドに当たりにくくしているんです。デートで使ってください(笑)
できれば太陽の下でキンキンに冷やしたワインと、バケツ一杯のムール貝と合わせたら最高ですね!BBQに持っていくのもいいですね!
今回は予定通りマテ貝の缶詰とAlbariñoを楽しんでみます。ところでシンガポール人が大好きなマテ貝ですが、缶詰は日本にあるんでしょうか?
ワインとの相性ですが、貝の持つ塩味、ワタ(取り残し…?)のビター感が冷えたワインのミネラル感に最高にマッチ!ウェットマーケットでマテ貝を買って、オリーブオイルと白ワインで蒸したものも試してみたい!ワインがシンプルで軽めなので、バターは使用しない方がいいですね。仕上げにオレガノなんて振ったらオシャレ!そしてレモンはお忘れなく!
皆さんもマテ貝とアルバリーニョでスペインへの旅、よかったらどうぞ!
次回は日本酒にまつわるエピソードをご紹介いたします!
< プロフィール >
渋谷 大輔
Daisuke Shibuya
<略歴>
北海道札幌市出身。現在、Suntory F&B Internationalが展開するSUN with MOON Japanese Dining & Caféと串カツ田中でシニアマネージャーを務める。
2020年には インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員に抜擢。
<ワイン資格等>
Certified Sommelier by Court of Master Sommelier
WSET Advanced Certified in Wine
インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員
WSET Advanced Certified in Sake
<受賞歴>
2019年 シンガポール – フランスワイン ベストソムリエコンクール優勝/アジア大会シンガポール代表
2019年 シンガポール – アメリカワイン ベストソムリエコンクール優勝
この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!