【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその334-炒粿条(フライド クェイ テォ)――香ばしさが食欲をそそるシンガポールの名物麺料理-

アジアの屋台料理といえば、湯気と香ばしい匂い、威勢のいい鍋さばき――その象徴的な一皿が、シンガポールやマレーシアで広く親しまれている「フライド クェイ テォ(Char Kway Teow/炒粿条)」です。もっちりとした平たいライスヌードルを高温の中華鍋で一気に炒め上げるこの料理は、単なる焼きそばとはひと味違う奥深い魅力を持っています。今回は、その起源や現地での食べ方、愛される理由をひもときます。

ルーツは南中国、屋台文化で花開く

「クェイ テォ」は広東語で「粿条(クォ ティアオ)」、つまり平たい米粉麺のこと。元々は中国南部の潮州(Teochew)や福建(Hokkien)から移住した人々が東南アジアに伝えた麺料理が起源といわれています。

シンガポールやマレーシアの多民族社会で様々な食材や調理法と出会い、ローカルフードとして独自に進化しました。特に20世紀半ば、労働者のエネルギー源としてホーカー(屋台)で人気に。コスパ抜群で腹持ちが良く、今でも地元の定番ランチや夕食としてホーカーセンターで主役級の存在感を誇ります。



炒粿条の基本構成と味わい

最大の魅力は、力強い香ばしさと複雑な旨味。主役は幅広でもっちりとしたライスヌードル。これに卵、もやし、ニラ、チャイニーズソーセージ(ラップチョン)、かまぼこ、プリプリのエビやアサリなどのシーフード、時には豚脂(ラード)や豚肉も加わります。調味料にはダーク&ライトソイソース、オイスターソース、海老ペーストやサンバルチリなども用いられ、甘辛さとコク、ほんのりしたスモーキーさが絶妙に絡みます。

最も重要なのが「鍋気(ウォッキー)」と呼ばれる中華鍋特有の香ばしさ。高温で一気に炒めることで旨味が凝縮され、食欲をそそる香りが立ちのぼります。屋台のおじさんが豪快に鍋を振るい、音と共に立ちのぼる煙―その五感で味わうライブ感も炒粿条の醍醐味です。

シンガポールの炒粿条の特徴と食べ方

シンガポールスタイルは、黒く濃い見た目が特徴。ダークソイソースやラードの風味が効き、こってりした旨味が後を引きます。麺と具材はしっとりと一体感があり、一口ごとに複雑な味が広がります。店によってはサンバルチリを添えたり、レモンやライムでさっぱりと味変することも。

また、具材や味付けのアレンジも豊富。油を控えめにした「ヘルシー炒粿条」や、シーフードをふんだんに使った「スペシャル炒粿条」なども登場しています。食べ方はシンプルで、お皿に盛られた炒粿条を豪快に混ぜ、一気に頬張るのが現地流。ホーカーでは、熱々の一皿と冷たいドリンクを手に、家族や友人とテーブルを囲む光景が日常です。



愛され続ける庶民の味

炒粿条は決して高級ではありません。しかし、その素朴さに歴史や文化、人々の暮らしが凝縮されています。シンガポールやマレーシアの人々にとって、幼い頃から親しんだ味であり、帰省時に必ず食べたくなる「おふくろの味」。店ごとの微妙な違いを食べ比べるのも、ローカルグルメ巡りの醍醐味です。


まとめ―五感で楽しむアジアの屋台文化

炒粿条は、シンガポールやマレーシアの屋台文化を象徴する料理のひとつ。香ばしく炒め上げられた麺と具材のハーモニー、鍋から立ち上る煙と屋台の喧騒。もし旅先で出会うことがあれば、ぜひその熱気とライブ感を全身で味わってみてください。庶民の味に隠された奥深いストーリーが、あなたのシンガポールライフにきっと彩りを添えてくれるはずです。


大人の社会科見学 筆者

森山 正明
大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3か月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。

2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。
 
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●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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