駐在夫、子を育てる-19-  駐在夫

これはシンガポールに駐在する妻に帯同し、“駐在夫”として家事や育児に奮闘する日々を綴ったコラムです。シンガポールのフリーマガジン「シンガライフ」誌上で連載しているものに一部加筆して、ウェブでも公開しています。


今回は番外編。私の属性である”駐在夫”について記します。誌面の内容に要素をプラスしました。

妻が駐在するということで帯同して、私がシンガポールに来たのが2018年。今からわずか3年前ですが、その当時は”駐在夫”という存在は、シンガポールに住んでいても耳にしませんでしたし、メディアでもまだまだ聞くことはありませんでした。
その当時と比べると、2021年の今は”駐在夫”の数が目に見えて増えてきたように感じます。私が知る限りの駐在夫(特にシンガポールの)の生態とは、こんな感じです。完全に主観です。

シンガポールで私が知りうる限りの駐在夫は8人です。そのうち面識があるのは、本帰国した人も含めて6人。面識はないものの存在を知っているのが2人となっています。
面識がある中では37歳の私が最年少。最年長で46歳だったかな。

多くの方は「駐在夫って駐在妻と何が違うの?一緒でしょ?」と思うと思います。性別しか違わないだろう、と。確かに”配偶者に帯同してきた私”という立場は同じですけれど、置かれる環境が大きく違います
最大の違いは「コミュニティが貧弱」ということ。次に挙げられるのが、孤独に陥りがちということ。
どういうことなのか。

◆コミュニティの貧弱さ

ー歴史の違い
シンガポールに初めて駐在員が置かれたのがいつなのかは、定かではありません。少なくとも半世紀前の1970年代には駐在員がいたことでしょう。その駐在員の多くは男性だったであろうことは容易に想像できます。そして、駐在する男性がいれば、帯同する配偶者=妻もいます。つまり、シンガポールにおける駐在妻の歴史は少なくとも半世紀以上はあるのです
対して、駐在夫はどうか。10年前の2011年にはいただろうか。正確なところは定かではありませんが、いたとしてもかなりの少数だったはずです。2021年でも8人であることから鑑みると、当時の数もかなり少ないことでしょう。
少なくとも50年前から連綿と続いてきた駐妻コミュニティに対して、歴史も浅く数も少ない駐在夫コミュニティがいかに貧弱であるか、をイメージしていただけるかと思います。

ーコミュニケーション力の差
男性よりもコミュニケーション力が高いと言われている女性の場合、子どもがいればママ友繋がりがありますし、子どもがいなくても同じコンドミニアム内で「じゃあ、新しく来た駐在妻さんを誘ってお茶でもしようか」となるような気が。こうして、ネットワークが広がるきっかけができます。

対照的に駐在夫の場合は、繋がるきっかけが生まれづらいのです。同じコンドに住む駐在妻たちが「じゃあ、新しく入居してきた駐在夫さんを誘って、お茶でもしようか」とはならないでしょう。
私がシンガポールに来てから初めて他の駐在夫のIさんと面識を持てたのが、2019年3月。タンジョンパガーにある「100am」4階のフードコートで、初めて会うことに。
シンガポールに来てから実に7カ月後のこと。その間は、同じ境遇の人がシンガポールにも、もちろん日本にも、いなかったので孤独感がありました。
100amでのIさんとの邂逅をきっかけに、そこから数人の駐在夫仲間ができ、さらにフェイスブックのコミュニティ「世界に広がる駐在夫」を介して和が増えました。といっても、わずか6人ですが。。。

ー悩みの言いづらさ
孤独さを感じてしまう一因に、同じ悩みを共有できる人がほぼいない、ということが挙げられます。
「日々もやもやと生まれる小さな悩みやすれ違い」。境遇が異なる人からみれば取るに足らないようなことがほとんどなんだけれど、その小さなもやもやがワインの瓶底にある”オリ”のようにたまり、そのうちに爆発してしまう恐れが。
「駐在妻に相談するのも違うし、ましてや日本で働く男友達に相談しても一笑に付されるだけ」。こう考えて、自分の悩みの小ささにふさぎ込み、そして孤独さが芽生えてくるのです

ー恵まれたシンガポール
ただ、駐在夫をするにしても、シンガポールで駐在夫ができることは恵まれていると感じます。なぜならシンガポールは国土が狭いので、実際に駐在夫の人と会えるからつまり、飲み会ができるということ
国土が広大な中国やアメリカなどとは異なり、シンガポールは端から端まで移動してもタクシーで30分強もあれば、到着できる広さ。
オンラインで飲みをするのと、実際に会って話すのとではそれこそ大違い。なぜなら、家族が周りにいると話しにくい話が多くなるからです。

ー打ち解けの早さ
同じ駐在夫というだけで、初対面でもすぐに打ち解けられるのが社会のマイノリティである駐在夫の強み。
2019年3月に100amで会った駐在夫のIさんとは、初対面だったものの似たような悩みを抱えていることがすぐに分かり、10年前から知己だったかのように打ち解けました。それからIさんを通じて、駐在夫仲間が拡大したのは前述しました。交友関係ゼロとイチとでは大違いです

ー待ち遠しい飲み会
駐在夫ならではの会話をできる相手が限られているため、飲み会の場はかなり貴重です。そのため「この日飲み会しましょー」と日程が決まると、その日が待ち遠しくて仕方ありません
話題はもっぱら生活のこと。「会社勤めの妻の飲み会が多すぎる」だとか「今日ご飯いるのかいらないのかの連絡がない」だとか「みんなの家では、家事の分担はどうしているの」だとか。もちろん配偶者への愚痴も。
年齢差はあるものの、それを感じさせないようなフラットな関係性が結構よきです。

ー先輩駐在夫から後輩駐在夫への助言
悩める新任駐在夫に対して、先輩駐在夫からのラインでの助言がとっても印象的。
悩める後輩駐在夫さん:「稼いでいないと(家庭内での)立場が弱いですね」
先輩駐在夫さんの返答:「稼ぐ=正義ではないかと。主夫をされてるので主張はしていいと思いますが」

こんな風にして、助け合っているグループなのです。

というわけで、シンガポールにいる駐在夫のみなさん、ぜひ和を広げましょう。ご連絡をお待ちしています。editor☆fiftyonemedia.comまでメールをください。(メールお送りの際は、☆を@に置き換えていただけますでしょうか)


誌面掲載イメージ

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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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