【ミャンマー×経済】コロナ禍とクーデターのダブルパンチ。都市貧困が3倍増となる現実

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

ミャンマーでは2月にクーデターが起こり、軍政のまま2022年を迎えようとしている。

一時的に日本に待避していた日系企業の駐在員はヤンゴンに戻る傾向がある。日本企業が多く入居するティラワ工業団地の稼働率も、クーデター前とまでは戻っていないものの、かなり高い水準まで回復している模様だ。

ヤンゴンは、ある種の平穏と安定を取り戻したかのように見える。ただ、軍政当局による民主活動に対する抑圧や、地方での戦闘、国内避難民の発生などがあることも確かだ。また、世銀は7月に、ミャンマーの年度で2020年10月〜2021年9月は前年比マイナス18%の見込みと発表している。

さらに、国連開発計画(UNDP)がショッキングな数字を12月1日に発表した。UNDPはミャンマー都市部の貧困率が2017年の11.3%から2022年初には37.2%へと3倍以上に増加すると予想した。

ここでいう「貧困」は、1日あたり1590チャット、約100円以下で暮らす人々を指す。クーデターだけでなく、コロナ禍の影響もあるが、都市に住む人々の3人に1人が貧困という現実は衝撃だ。

さらに、国全体でみると46.3%が貧困層となるとUNDPは分析した。

クーデター後の家計への影響についてもUNDPは調査しており、自営業収入50%減、給与所得25%減、農業収入25%と分析し、かつ、海外で働く出稼ぎ労働者からの送金も10%減と報告した。

2021年12月1日付日本経済新聞電子版は、「経済回復を支える中間層が消滅してしまいかねない」とUNDPアジア太平洋局長の発言を報じて中間層の減少を指摘した。

他の東南アジア諸国も、国の経済が上向き、次の発展ステージへと向かったタイミングは、中間層が分厚くなり、消費と生産が好循環を生んでいくという流れが形成された。

「開国後」のミャンマーは、まさにこのプロセスが始まり、外資企業の進出ラッシュ、雇用が生まれ、給与所得が増え、消費が盛り上がり、企業も儲かる・・という循環が形成されつつあった。

現在の軍政は長期化しそうであり、報道も大幅に減っているが、日本企業のプレゼンスが大きい国だ。今後も関心を高く持ってフォローしていきたい。

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*2021年12月7日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

クロールアソシエイツ・シンガポール シニアバイスプレジデント

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアや新興国を軸としたマクロ政治経済、財閥ビジネスのグローバル化、医療・ヘルスケア・ビューティー産業、スタートアップエコシステム、ソーシャルメディア事情、危機管理など。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年12月より現職。共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所共同研究員、同志社大学委嘱研究員を兼務。栃木県足利市出身。




この記事を書いた人

SingaLife編集部

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