日本企業の継続的な海外事業支援を行う「RednoW」立ち上げ担当者にインタビュー

シンガポールが“本当に期待する”日本のモノやコトを知り、現地で売るための日本商品輸出プラットフォーム『RednoW』。プロジェクトを立ち上げた担当者、One&Coの伊藤隆彦さん、JR東日本シンガポール事務所の阿部智成さんにインタビューしました。



「RednoW」はJR東日本シンガポール事務所と、コワーキングスペースOne&Co、日本企業の海外マーケティングを行うVivid Creationsの3社協働で立ち上げたそうですが、どういう経緯でスタートしたのでしょうか?

まず、僕が担当しているOne&CoはJR東日本が運営しているコワーキングスペースです。日本とシンガポールをつなぐビジネスプラットフォームとして、これまで3年以上稼働してきた中で、沢山の方々と出会い、さまざまな話をさせていただきました。

その中には行政や自治体、生産者や組合、メーカーの皆様も多く、本当にいろいろな意見を聞かせていただきました。

そしてコロナが収束に向かう中、ただ以前のように戻るのが良いか、今後どうあるべきかについて幾度となく話をさせていただく中で、「市場(マーケット)」だけではなく「社会(ソサエティ)」が何を必要としているのかも重要なのではないかと考えるようになりました。

そこで改めて、これまでの商談会や催事などがどのような構造で成り立っているかを見直していったのですが、その多くはプロダクトアウトがベースで、早々にそれらを「マーケット・イン」に転換していくべきだと思ったのです。

またシンガポール市場で売れるか売れないかだけではなく、例えば「10%未満の食料自給率やフードロスなどの問題」「肥満や糖尿病との関係」「外食規制で芽生え始めた自炊需要」など、シンガポールの社会視点に立って展開する事も大事だと思うんですよね。

マーケット・インを拡張した「ソサエティ・イン」の発想をベースに展開していくのが良いのではないかと考えるようになったんです。

そこで今回、VividのまほさんやJR東日本シンガポールの阿部さんと話しを重ねるうちに、仕掛けるなら早い方が良いとの流れになり、スモールスタートでプロジェクトを開始する事にしました。


シンガポールの市場(マーケット)に入る=社会(ソサエティ)に入る、という訳ですね

はい。そのためにシンガポールの卸最大手、Angliss社と共同で行います。こちらは70年以上の歴史を持ちながら、食の持続の可能性を追求していて、さまざまな研究や開発を続けている企業です。

CEOのAngelさんが私たちの考えに深く共感してくれたことで実現しました。Anglissのような大きな卸会社でありつつ、ライブコマースまで展開している企業に共感していただけたことは非常に心強いですね。

*Angliss社の顧客は高級ホテル、レストランから主要スーパーマーケットまで幅広く、3000社以上へ卸業を展開する実績を持つ。2020年にはフェイスブックでライブコマースを開始。フォロワー数は1万8700人、1番組あたりの平均売上は約260万円に上る。



シンガポールで物を売りたい方(企業)は具体的にどんなサービスを受けられるのでしょうか?

Angliss社はライブコマースの番組を持っているので、審査に通った商品の売れ行きや視聴者の反応を見て卸先を検討し、同時に売り方や売り場なども一緒に考えていきます。

「価格が高すぎないか?」「デザインがローカルの好みにマッチしているか?」「希少価値がありそうか」などが特に重要なポイントになります。


売りたい側が参加するメリットは、具体的な情報を得られることですか?

はい。生産者や卸の方は市場の把握が難しい場合もあると思います。なので、当地の生の反応を公開していく事が大事な役目の一つだと思っています。

例えば、「この商品はおいしいけど、価格とニーズがマッチしていないので、今のシンガポールでは難しい。こちらの商品ならいけそうなので、まずそっちを強化しませんか」のような具体的な提案が可能です。

「受け入れられない理由はなぜなのか?」などの検討が出来るので、現地で足りないもの、求められているものを分かった上で今後の展開を検討できるのは強みだと思います。


良質な日本商品でも売れるとは限らないのでしょうか?

日本でも売れているから、東南アジアでもヒットするでしょう。「食べてさえもらえれば分かってもらえる」という考え(=プロダクトアウト)で日本の商品を輸出しようとする動きはとても多いと思います。

もちろん、その考えも時には正しいと思います。実際、日本商品がシンガポールで展開しやすい時期もあったと聞いています。でも今は日本製品も豊富に入ってきていて、ある意味飽和状態。プロダクトアウトだけでは、シンガポールの現状に合っていない側面もあると思います。

これに対し、市場やお客様が先にあるのが「マーケットイン」という考え方。顧客が何を求めているのかをしっかりとリサーチした上で、今何を売り込むかを考える思考です。

「RednoW」はシンプルに言うと、「マーケットイン」をベースに、「シンガポールで日本の商品を売りたい側」と「買いたいシンガポールの客」とを、ニーズを掴んで的確に繋ぐ日本商品輸出プラットフォームです。


プロジェクトは12月頭からスタートしていますが、第一弾はどんなテーマなのでしょうか?

1月9日まで第一弾を募集中で、テーマは「加工食品と飲料」です。

冷蔵や冷凍の加工品、調味料や日本酒、製菓などを募集し、ご応募頂いた商品を、食品卸会社AnglissのFacebookライブコマースで販売します。そこで最も売れたものを中心に、Anglissの卸先(高級ホテルやレストラン、主要スーパーマーケットなど)にプッシュしていく予定です。


今後の展望は?

少しずつでも、考え方に共感していただけた方から「次のチャレンジを一緒にしたい」という声が増えていけば嬉しいですね。我々がハブになっていくことで相乗効果で達成していきたいです。

将来的には、東南アジア全域にこのプロジェクトを拡大していきたいので、「今のシンガポールでは合わないけど、2023年のインドネシアでは需要がありそうなので、そっちでもやっていこう」のようなプランニングもしていきたいですね。

そして徐々に、観光やライフスタイルにも着手していきます。コロナ後のインバウンドがどんどん始まっているので、シンガポール人から次の旅行先を聞かれたら、日本人が選ぶのではなく、シンガポール人が選んだ場所を紹介できるようにしたいですね。


読者へメッセージを

伊藤さん

日本商品はシンガポールにすでに沢山あるけれど、例えば何か一つ良いものが入ると(既存の何かが)一つが無くなる現状に違和感を覚えています。キャパの問題もあるけど、もっと良いものが増えていくためにはどうしたら良いか、まず現実を知ることから始めていきたいと思います。
何か面白い事(もの)を仕掛けてみたい方は、ぜひOne&Coにお越しください。

阿部さん

日本人が抱く東南アジアのイメージとシンガポールの現状は異なっています。

10年前のマーケットの状況とかなりかわってきています。そういう観点で言うと、One&Coはネットワーキングや業種の方も多いので、いろいろな絡みも作りやすいと思います。

新プロジェクトに興味を持っていただくと合わせて、シンガポールでのネットワーキングでしたらぜひOne&Coに一度お越しください

<プロフィール>
●伊藤さん|One&Co General manager
株式会社CO&COのCDOとして、空間レイアウトや各種ツール、提供コンテンツやコミュニケーションに至るまでのデザインを監修しつつ、シンガポールにおけるOne&Co事業をメインで担当。
日本企業の「−1→0 (マイナスイチをゼロにすることで未来の暮らしを豊かにする)」を支援するため、様々な活動を展開している。
 
●阿部さん|JR東日本シンガポール事務所
前職ベネッセコーポレーションにて、メディア事業、ショッピングモール事業に携わり、その後インドネシアにて新規事業の立ち上げ、マーケティング活動を行なったのち、JR東日本へ転職。
国家プロジェクトであるインド高速鉄道の資金調達を経て、2021年よりシンガポールに駐在。
One&CoやJAPAN RAIL CAFEなどの生活事業を中心に事業運営を行っている。




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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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