【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその308
-DBS銀行-
シンガポールで生活を始めると、多くの日本人がまず直面するのが銀行の選択です。給与振込やクレジットカードの発行、ATMでの現金引き出しなど、生活に欠かせない存在であるローカル銀行は、重要な生活インフラの一部です。日本人駐在員の多くは、会社が指定する銀行を利用することが多いですが、シンガポールにはローカルで代表的な銀行が三つあります。本連載では、シンガポールの三大ローカル銀行をそれぞれ紹介し、その役割や特徴に迫りたいと思います。
初回は、シンガポールを代表するDBS銀行です。DBS銀行は1968年、シンガポール政府が国内産業の発展を支える開発銀行として設立しました。それから半世紀以上が経ち、DBSは東南アジア最大の銀行に成長し、消費者銀行業務、資本市場、証券仲介などの広範な金融サービスを提供しています。その存在感はシンガポール国内にとどまらず、アジア全体の金融市場に大きな影響を与えています。
DBSの歴史において大きな転機となったのが、1998年のPOSB銀行(シンガポール最古のローカル銀行)の買収です。当時、POSBは400万人以上の顧客基盤を持ち、シンガポール国内で圧倒的なネットワークを展開していました。POSBのATMや支店網をDBSが活用することで、都市部から住宅地に至るまで、幅広い地域に質の高い金融サービスを提供することが可能になりました。この買収により、DBSは地域に密着した戦略を強化し、国民の信頼を獲得しました。
2010年代に入ると、DBSはデジタルバンキングに力を入れ始めます。2010年にはモバイルバンキングアプリ「digibank」を、2014年には電子ウォレット「PayLah!」をリリース。PayLah!はリリースからわずか数年で100万人以上のユーザーを獲得し、DBSはアジアにおけるデジタルバンキングのリーダーとしての地位を確立しました。さらに、2019年には「ユーロマネー」「グローバル ファイナンス」「ザ・バンカー」の三つの権威ある金融専門誌から同時に賞を受けるなど、そのイノベーション力は国際的にも高く評価されています。
DBSのもう一つの特徴は、「金融機関からテクノロジー企業へ」というビジョンです。「Make Banking Joyful」というスローガンのもと、銀行業務をよりシンプルで使いやすいものに変革しようとしています。GoogleやAmazon、Netflixといった世界的なテクノロジー企業と肩を並べる存在にすることを目指しており、DBSの取り組みは単なる金融サービスを超えた革新を目指しています。
しかし、急速なデジタル化の過程でDBSも課題に直面しています。2023年には、DBSは複数回にわたるシステム障害を経験しました。3月、5月、10月と立て続けにサービスが停止し、シンガポール金融管理局(MAS)からは追加の資本要件や新規事業の一時停止措置を命じられるという厳しい処分が下されました。この問題の解決を進めるため、現在進行形でシステムの安定性と信頼性の向上を目指し、組織全体での改善が進められています。
現在、DBSはデジタル化の推進とシステムの安定性向上というバランスを保ちながら、アジアの金融業界をリードする存在として、DBSは挑戦を続けています。DBSの成長と挑戦の成否は、アジアの金融市場全体の未来をも左右する重要な指標であり、その動向は今後も注目されることでしょう。
◆大人の社会科見学 筆者
森山 正明 大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3カ月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。 2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。 ●大人の社会科見学の電子書籍版完成! 詳細はこちらから |
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!