【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその325
-シンガポールの食文化入門:魅惑のチリクラブ物語-

日本からシンガポールへ赴任された皆様、新生活はいかがお過ごしでしょうか。そろそろ慣れたころになりますでしょうか。慣れない土地での生活には戸惑いも多いかと思いますが、その中でも「食」はきっと皆様の大きな関心事のひとつではないでしょうか。今回も、そんなシンガポールの魅力あふれる食文化についてご紹介いたします。

シンガポール料理は、多民族国家ならではの豊かなバリエーションを誇ります。さまざまな国の食文化が融合し、独自の進化を遂げてきたシンガポール料理は、まさに“食の宝石箱”と言えるでしょう。中でも、会社の大切なお客様をもてなす際や、特別なイベントで定番となっている料理があります。それが、シンガポール料理の代表格「チリクラブ」です。

初めてシンガポールを訪れる方にふるまう料理としても間違いなく喜ばれる一品であり、まさにシンガポールを象徴する名物料理です。実際、世界的なメディアによる「世界で最もおいしい料理50選」にもランクインし、その美味しさは国際的にも高く評価されています。



このチリクラブには、興味深い誕生の物語があります。1956年、屋台料理として誕生した当初は、蒸した蟹をそのまま提供していたそうです。しかし、ある料理人が蟹をトマトソースで炒め、さらにチリソースを加えてみたところ、たちまち話題となり、「パーム ビーチ レストラン」という店舗を構えるまでに発展しました。

その後、別の料理人によって、サンバル(インドネシアやマレー料理で使われる辛味調味料)、トマトペースト、溶き卵などが加えられ、より酸味とコクのある味わいへと改良されました。この新しい味もまた多くの人々に愛され、チリクラブはシンガポール全土で広く親しまれる料理となったのです。

“蟹料理の王様”とも呼ばれるチリクラブは、今やほとんどのシーフードレストランで提供されています。 一般的には、身が甘くジューシーなノコギリガザミ(英語名:Mud Crab、和名:胴満蟹)が使われます。そして、この料理の最大の魅力は、やはり絶品のチリソースにあります。甘さと香ばしさが絶妙に調和し、とろみのあるふわっとした食感は、一度味わえば忘れられないほどの美味しさです。

また、揚げた饅頭(マントウ)が添えられるのが定番で、ソースにたっぷり絡めて食べるその瞬間は、まさに至福のひとときです。ただし、チリクラブは手づかみで食べるのが伝統的なスタイルのため、食後は手がベタつくことも。とはいえ、レストランでは濡れタオルやライム入りの洗面器が用意されていることが多く、安心して楽しめます。

このチリクラブは、シンガポール政府観光局も「国民食」として紹介している、まさに国を代表する料理です。まだ味わったことのない方は、ぜひ一度お試しください。すでに体験済みの方も、きっと久しぶりに食べたくなるはずです。ただし、蟹を丸ごと使用するため、価格がやや高めになる点にはご注意を。注文前に料金を確認しておくと安心です。どうぞ、シンガポールが世界に誇る美味の極み「チリクラブ」を、心ゆくまでお楽しみください。

大人の社会科見学 筆者

森山 正明
大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3か月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。

2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。
 
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●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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