静かな住宅街で歴史を刻む、シンガポール最大、そして長い歴史を持つアンティークショップ「Just Anthony」 新しい命を吹き込まれた、美しいものたちに出会える場所



1970年代にまでさかのぼる歴史を持つジャスト・アンソニーは、その名の通りアンソニーさんがオープンしたアンティークのお店。

アッパー・パヤレバの古い中国風の家屋にあるお店は、アンティークの商品とマッチして友人のお宅を訪問するような気分になれる場所です。外に置かれた石像は、このお店の守り神といった風情。


アンティークとの出会い

会社勤めをしていたアンソニーさんが、ずっと興味を持っていたアンティークを仕事にしたきっかけは、引っ越しの際に出た大型の古い家具を見た時でした。HDB公団住宅がどんどん建設されて、そこに移る際に大型の家具は邪魔だし古臭いと考える人たちがいたそうです(もったいない!)。 そこでプラナカンのアンティークを売る仕事をはじめたら、古い家具の持つ歴史や風合いにどんどん惹かれて、そちらに専念することに

そしてもっと多くの商品を求め、中国へ買い付けに行くようになりました。

Just Anthonyは、多くの海外からの駐在員やローカルのアンティーク・ラバーの支持を受け、現在まで順調に発展してきました。コロナ規制が入る前は、毎月1回は買い付けに中国へ渡っていました。中国の地方都市にある家の奥深くに眠っていた家具や、味のある使い込まれた家具など、コレクターズアイテムでなく、実際に使ってみたい、温かみのある商品ばかり。そんな品ぞろえがJust Anthonyの良さです。



足踏みはせず、常に前へ

そして現在、新しい商品が月に1回は届きます。買い付けに行けない分、信頼のおけるサプライヤー以外に、新規のサプライヤーを開拓、少しづつ確認しながら商品を買い付けています。おかげで一戸建ての家を改造したお店には、引き続きたくさんの商品であふれており、コロナ禍以前と比べて、商品の数は増えているそうです。

ただ写真では確認できないこともあり、残念ながら傷み具合や色合いがイメージと違ったりすることも。そんな場合は、併設する工場でカスタマイズ。色を変えたり、修理をしたりして、新しいオーナーさんとの出会いを待ちます


2代目のダニエルさんの思い

アンソニーさんの娘さんであるダニエルさんは、アンティークには全く興味がなかったといいます。大学時代にお店の手伝いをすることはあったものの、まさか店の経営に参加するとは思わなかったそうです。ただ中国の買い付けに同行するのは楽しく、徐々に商品の価値なども実地で学んでいき、大学卒業後に正式に始めました。

ダニエルさんが肌で感じるのは、最近の傾向です。中国のオリエンタルな家具を購入するのは、インテリアに個性を出すための人が多いということ。いかにも中国の家というイメージではなく、モダンなインテリアに一点パッと目を引く個性的な家具を置きたいという人たちです。

そんな人たちに喜ばれているのが、再生したニューアンティークの家具たち。例えば他の部分は痛みがひどく使えないけれど、ドアの部分だけは美しい、という家具がありました。

※中央のキャビネット。二段目の引き出しと本体は新しいもの。扉6枚は古いもの。ランプは自社製。

その美しいドア部分を生かし、他の部分を新しく作り直し、それを組み合わせて飾り棚へと生まれ変わらせました。その際に大きさも、少し小さめにして、シンガポールのライフスタイルに合わせました。それによって存在感を薄め、他の家具と馴染みやすくもなっています。

長い歴史を生き抜いた家具を捨ててしまうのは切ないという意識です。サステナブルを重要視する、最近のムーブメントにもあっています。



時代に合わせて変化するビジネススタイル

ダニエルさんは、トレンドに合わせてビジネススタイルを対応させることは、若い世代のニーズに応える意味でも重要だと思っています。

最近では、クラシックなイメージでありながら、現代風に味付けした家具に力を入れています。アンティークスタイルを参考に、より使いやすくしたもの。


アンティークデザインを参考に、今求められる商品を作る

色やデザインなどを変えています。古いもの、特に中国のものは赤や黒など、はっきりとした色が好まれますが、Just Anthonyが作る家具はスモーキーカラーミッドナイトブルーなどを使ったものがあり、人気です。


アンティークと呼べる家具は100年以上経過したものでなければならないため、供給量が限られていて、経年劣化していないものを探すのが難しくなっています。これからはこういうミックススタイルが主流になっていくのかも知れません。

そういう意味では、Just Anthonyは、一般的なアンティークショップでなく、オリエンタルなインテリア商品全般を扱うお店といえます。

オリジナルランプは、陶器の壺に手を加え、ランプにしたものです。目を引く存在感があるので、一つ二つあれば、インテリアのポイントにもなります。そのデザイン性と機能性は、若い世代の心をつかみ、Just Anthonyの売れ筋商品となっています。ダニエルさんは、陶器のアンティークは扱わず、新しい陶器をJust Anthonyでランプへと生まれ変わらせるのです。

こちらは飾り棚。中にライトを付けて、モダンな印象に。それにより、大型でも重厚すぎなくなりますね。

古いヘッドボードのフレームをライトにしました。ダイニングテーブルから下げれば、一気に個性的に。ニューアイデア。


何千点もの商品ラインナップ

お店の中以外にも、ウエアハウスで保管しているものもたくさんあります。クラシックなスタイルの大型ベッドなどは、お店に置くのは難しいので。ですから欲しい商品があったら、ぜひダニエルさんに相談してみてください。在庫の中からきっとぴったりの商品を紹介してくれます。

お店にある商品の多くは数百ドルから千ドルくらい。もちろん一万ドル以上の商品もありますが、普段使いできる商品が中心です。もっと気軽に買える商品もたくさんあります。ぜひ、一度お店に足を運んで、手に取ってみてください。たった一つの品から、ライフスタイルが劇的に変わります。


インテリアのアイデア

最後にダニエルさんのお客さまが実際にしているインテリアを紹介します。インテリアの参考にしてみてください。

1) オリエンタルスクリーン

オリエンタルスクリーンの左右のスペースに、大きな鏡を2枚使いリビングルームをより広く感じさせます。同時に印象的にするためにランプを巧みに使っています。

家具や小物はオリエンタルなものが多いのですが、ラインはすっきりとシンプルで、モダンなミラーや他のモダンな家具との相性も抜群です。

2)トールドアパネル

背の高いドアパネルのセットを蝶番でつなぎ合わせてスクリーンにしました。たった一つプラスしただけで、部屋のイメージがより高級感が増しました。ソファ、コーヒーテーブル、ラグ、アクセサリーはお客さまが元々持っていたものです。

3)ミラーとテーブル

玄関先の小さなスペースに、鏡と少し凝ったテーブルを置いてパワーアップしました。空間が明るいので全体的に重たくならず、植物や花が印象を和らげてくれます。

この日も、ついお店に長居をしてしまいました。とても居心地が良く、語りかけてくる家具や小物たちとの対話が楽しく、時を忘れてしまいます。

自身も一個だけ、飾り玉を購入しました。旧正月にふさわしく、「福」の文字入りです。おかげでいい一年になりそうです。

たった一個の小物で、楽しくなりました。

気持ちを変えるのは、インテリアをほんの少し変えてみるのが早道かもしれませんね。

Just Anthony(ジャスト アンソニー)
住所:379 Upper Paya Lebar Road S534972
営業時間:9:30〜18:30
定休日:チャイニーズニューイヤー(2022年1月31日〜2月3日 2022年2月4日より通常営業)
電話:6283 4782、6283 4722
ウェブサイト:Just Anthony

 



この記事を書いた人

林じゅん子

長崎県出身。バブル期の東京で浮かれて過ごし、そのままシンガポールへ。気がつけば20数年!香港映画がきっかけでアジア芸能にはまり、シンガポール初日本人芸能記者(自称)に。ラジオ、雑誌ともに芸能一筋、出会った芸能人は数知れず。 現在はエンタメ以外の3大好物、イケメン、おいしいもの、アニマルネタ目を光らせる。期間限定&新製品にも目がない、ローカルどっぷりジャパニーズ

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