【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその335
-具材を選ぶ楽しみ、多様性を味わう「ヨンタオフー」の世界-

シンガポールやマレーシアのホーカーセンターやフードコートを歩くと、ずらりと並んだ色とりどりの具材に目を奪われることがあります。それが「ヨンタオフー(Yong Tau Foo)」の店。たっぷりの野菜や豆腐に魚のすり身を詰めたもの、肉や練り物、キノコ、麺など、まるで宝石箱のようなトレイから自分好みの具材を選び、好みのスープや味付けで楽しめるのが、この料理の最大の魅力です。

今回は、ヨンタオフーの起源や現地での食べ方、文化的背景まで、その奥深い世界を紹介します。

ヨンタオフーの起源と歴史

ヨンタオフーはもともと中国・客家(ハッカ)系の移民が伝えた家庭料理で、「釀豆腐」と書きます。直訳すると「詰め物をした豆腐」という意味。ハッカの人々が中国から東南アジアへ移り住む中で、手に入る食材や現地の食文化と融合し、現在のような多彩なスタイルに進化しました。

もともとは豆腐に豚肉や魚のすり身を詰めて煮るシンプルな料理でしたが、今では豆腐だけでなく、ナス、ピーマン、オクラ、苦瓜(ゴーヤ)、しいたけ、油揚げ、さらには練り物やワンタン、揚げ物まで、バリエーション豊か。こうした多様性こそが、ヨンタオフーが東南アジア全域で広く愛されている理由です。

選ぶ楽しみ、組み合わせの自由

ヨンタオフーの最大の特徴は、自分で好きな具材を選ぶスタイルにあります。ホーカーセンターでは、色鮮やかな具材がトレイに並び、トング片手に好きなものを皿に取り分けていきます。

初めてだとどれを選ぶか迷ってしまうほど。魚のすり身を詰めた豆腐やナス、ぷりぷりのフィッシュボール、揚げ湯葉、肉詰め唐辛子、各種野菜、麺や春雨など、どれも個性的で、健康志向の人にもおすすめです。

好きな具材を選んだら、次は「スープ」か「ドライ(和え麺)」かを選択。定番のスープ仕立ては、あっさりとしたクリアなスープに具材を入れて煮込んでくれます。豆腐や野菜のうまみがスープに溶け出し、ホッとするやさしい味わい。ドライタイプの場合は、ゆでた具材と麺にタレやチリソースを絡めて提供され、よりパンチのある味付けが楽しめます。



味の決め手はソースとトッピング

ヨンタオフーには、数種類のディッピングソースが欠かせません。ほんのり甘辛いチリソース、香り高い発酵豆腐ソース(タウチオ)、ガーリック入りのサンバルソースなど、お店によってレシピもさまざま。好みで少しずつつけながら食べるのが現地流です。また、揚げガーリックや刻み青ねぎ、香菜などのトッピングを加えると、味わいがより一層深まります。

シンガポールでは、麺類を追加するのが定番。ビーフンやイエローミー(卵麺)、春雨などから選べるので、ボリュームも調整しやすく、ランチにもディナーにもぴったりです。

健康志向と多民族国家ならではの文化

ヨンタオフーは野菜や豆腐が中心のヘルシーな料理として、幅広い世代から支持されています。油っこい料理が多い東南アジアの屋台のなかでも、野菜たっぷりで脂控えめ、たんぱく質も豊富に摂れるバランスのよさは特筆すべきポイントです。

また、具材やスープの選び方によって、ベジタリアンや宗教的な食事制限のある人にも柔軟に対応できる点も、多民族国家・シンガポールならではの進化といえるでしょう。

まとめ―自分だけの一杯を楽しむ贅沢

ヨンタオフーは、シンプルで素朴な見た目ながら、その裏には深い歴史と多様な文化、そして現地の人々の暮らしに寄り添う工夫が詰まっています。好きな具材を自由に選び、体にも心にもやさしい一杯を味わう贅沢。ぜひホーカーセンターで自分だけのヨンタオフーをカスタマイズしてみてください。きっと新しい食の楽しみが広がるはずです。

大人の社会科見学 筆者

森山 正明
大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3か月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。

2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。
 
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●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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