MUJI Community Marketで2週間開催された神奈川フェア。イベント開催においての手応え、課題点などを伺いました

MUJI Community Marketで4月7日から2週間開催された神奈川フェア。過去に3回無印良品で開催されたフェアと同様、大盛況に終わりました。今回神奈川フェアに出展していただきましたジェトロシンガポール神奈川ディビジョンのディレクター、美馬 理(みま おさむ)様に、改めて今回のフェアの感想と効果についてお伺いしました。

●MUJI Community Marketとは・・・無印良品とディスカッションした日本の各地域の厳選商品をお届けするイベント。個性あふれる地方のレアな商品をシンガポール人やシンガポールに住む日本人に楽しんでもらいたいという想いから始めた展示会です。



前回のインタビューでは、神奈川県の企業様からの問い合わせが増えていること、湘南海岸へのイメージ戦略についてお話しを伺いました。今回の神奈川県フェアの手応えはいかがでしたか?

まず湘南産の果物「湘南ゴールド」は、温州ミカンとレモンの中間のような味わいで甘さとフレッシュさを兼ね備えているのですが、すぐに完売しました。SingaLifeさんの事前広告の効果もあったかと思います。

3月4月が旬の湘南ゴールドを採れたてで販売するというこだわりから、今回空輸で運んだのですが、フレッシュさを保った状態で販売できたことが大きかったようです。多少なりともシンガポールで湘南ゴールドの認知に繋がったのではと思っています。

少しでもこの美味しさが認識されれば、今後「湘南ゴールド」味として、飲み物やお菓子のフレーバーや香り付けとしても使え、様々な商品販売に繋げられるのではと期待しています。


他の商品の手応えはいかがでしたか?

川崎大師の近くで昔から販売されている大谷堂のわらび餅も販売しましたが、現地に行かないと買えないもので歴史のある商品なので早くに完売したようです。次もしシンガポール人の方が川崎大師に観光に行った時にまた購入したいと思ってくだされば、インバウンド効果にも期待ができそうです。

また、城下町として知られる小田原、籠清(かごせい)の小田原おでんや揚げ蒲鉾も完売となったようです。これはシンガポール人がローカル料理の醸豆腐(ヨンタイフー)の揚げかまぼこを食べなれていることもあって、一般的な蒲鉾より売れるのではないかと思い、出品することにしたのですが、それが当たったのかなと思いました。どういったものが受け入れられるかは、なかなか予測が難しいですが、その土地の人々の口に合うかどうかをきちんと分析する必要があるなと改めて実感しました。


今までも展示会に参加されたことがあったかと存じますが、他の展示会との違いはありましたか?

今回のフェアは期間が2週間で、他の展示会と比較すると短めかなと感じました。そのため、出品する商品をあえて2週間で売り切れるものに設定し、今までの展示会で出していた日持ちのする乾物や缶詰などではなく生鮮食品を販売することにしました。そのため、湘南ゴールドなど空輸でしか美味しさをお届けできない商品に特化できたかなと思っています。


MUJI Community Marketに参加されて、お気づきになった点などあれば教えてください。

今回参加したのは、ローカルのお客様にどこまで認知していただけるか、神奈川の商品を届けられるかを重要視して参加したところが理由として大きかったんです。が、実際SingaLifeさんの広告や無印良品の告知を見て、思っていたより多くの日本人在住者が来て商品を購入していただいたようで、こうした販売イベントでは現地に住む日本人をターゲットにしても十分、現地のローカルのお客様への認知度を上げる効果はあるのではないか、と気づきました。

というのも、日本人のお客さまが購入していると、自ずととローカルのお客様にも「これは日本人に人気なので美味しいのではないか」と売場で伝わっていくという現象が起こるからです。

また今回のイベントで商品を知ったバイヤー様から、当方に問い合わせいただいたこともありました。バイヤー専門の商談会ではなく、消費者向けの販売イベントでもバイヤーの方にアピールする効果がある、ということも新たに発見できたポイントです。売れ筋の商品などを売り場で見られるという、ある意味ベンチマーキングができる絶好の機会なので、バイヤーの方にとって販売のイメージが付きやすいのだと思います。MUJIが主催するフェアだからこそのブランディング力もあって気付けた点なので、今後の販売会でも活かせればと考えています。


具体的な課題点があれば教えてください。

今回、湘南ゴールドは2週間の展示会だからこそ空輸で運びましたが、今後もし販売することを考えるならどのようにシンガポールに持ってくるかを考えなくてはいけません。実際、湘南ゴールドは旬の時期が3月4月と2カ月なのと、生産量が限られるため農家さんも国内販売を重点的にと考えていて、今回は湘南ゴールドのフレーバーの認知、という風に割り切り展示会に持ってきたつもりです。

ただ、今後もし農産物の輸出を検討するなら、収穫の多いもので継続的に定期便に乗せられるものというのが条件になるかと思います。神奈川県には大根や小松菜の農家もありますが、農産物はブランドイメージが大切なのでどこまで販売が可能なのか、どのようにアプローチするのかを模索しないといけません。他地域が輸出していない空白のシーズンに神奈川県産の農産物で補うなど、現地のニーズに合わせた商品展開が必要になりそうです。

また、どうしても冷蔵品・冷凍品は運搬・管理コストがかかるため、乾物や飲料系、お菓子の販売となりがちですが、取扱いが難しい商品であっても、複数の商品を集約して混載便で運ぶなど、いかにローコストで持って来れるように工夫するかも大きな課題だと言えます。


今後、神奈川県の特産を広めるためにどんな取り組みをされますか?

当方としては、コロナ以前に行っていたように、現地バイヤーと神奈川県の食品関連企業をマッチングするB to Bの取り組みが中心になると思いますが、今回のような一般消費者向けの販売イベントを通してどういった商品が人気なのかが、個人的に見えてきたところもあります。

過去に関わらせていただいた販売イベントや商談会などから、輸出禁止になり得る商品やシンガポールで販売方法が難しい商品などがある程度わかるようになってきたので、今後はB to Bの商談会で企業や団体に多少なりともアドバイスができるかなと思っています。

シンガポールのトレンドやニーズを県内企業に伝え、現地バイヤーが気に入ってくれる商品をたくさん持って来られるよう、両者をうまく繋ぐ取り組みを今後も引き続きしていきたいと考えています。

ジェトロシンガポール神奈川ディビジョン/ディレクター(神奈川県シンガポール駐在員)
美馬 理(みま おさむ)

1995年に神奈川県庁に入庁。約25年間にわたって経済関連の各所属を歴任し、神奈川県内経済の活性化や県内企業の支援に取り組む。

【過去10年の略歴】
2012年~2013年 産業立地課
2014年~2016年 ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室
2017年~2018年 企業誘致・国際ビジネス課(企業誘致グループ)
2019年     企業誘致・国際ビジネス課(国際ビジネスグループ)
2020年~現在  現職




この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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