深掘りしよう!シンガポールの大統領、現在はどんな人?首相と大統領の役割の違いは?
シンガポールに大統領がいることを皆さんご存知ですか?現大統領はハリマ・ヤコブ氏。その選出方法や首相との役割の違いを知り、シンガポールの政治を深掘りしていきましょう。
シンガポールの政治体制はどうなっている?
1965年、数々の苦労を乗り越え独立国家として誕生したシンガポール。長らくイギリスの植民地だったこともあり、政治体制も英国法を受け継いでいます。
現在の議会制民主主義制度はもともとの英国法をシンガポールのニーズや政治体制を反映しながら反映したもの。憲法が行政、立法、司法の3つの国家機関の基本原則、基本的な枠組みを定めています。行政府は内閣で構成され、立法府は国会で構成され、司法の機能は独立して憲法に保護されています。
首相はその3つの中でも要となる内閣の議長をつとめ、行政府の実質的な長で、政府の全般的な政策の方向性を監督しています。また、この内閣の下に、Minister for Foreign Affairs(外務省)、Minister for Defence(防衛省)などの各省庁がおかれています。
シンガポールの大統領について
ハリマ・ヤコブ氏〜現大統領はどんな人?
2017年の大統領選から第8代シンガポールの大統領をつとめているのはハリマ・ヤコブ氏(Halimah Yacob)。1954年8月23日生まれ。マレー系でシンガポール初の女性大統領です。
8歳の時に父を失います。母親に女手一つで育てられ、母と路上でナシ パダン(nasi padang)を売り歩き、 貧しい幼少期を過ごしています。シンガポール国立大学で法学学士号を取得し、国際労働機関で法律の仕事に従事。その後2001年、ジュロン選挙区より出馬をし、政治家としての人生が幕を開けます。
その後、地域開発・青年・スポーツ担当国務相、社会・家庭新興担当国務相、国会議長の経歴を経て大統領となりました。お子さんはなんと5人!大統領就任後もHDB(公団住宅)に住み続けていたものの、国家の長としての治安上の問題により引越しをしたというエピソードもあります。
大統領はどのように選ばれる?
もともと大統領は国会により選ばれていました。しかし1991年の法改正により国民の直接投票により選出されるようになり、1993年就任のオン・テンチョン(Ong Teng Cheong)氏が直接選挙で選出された初代大統領となりました。大統領に立候補できる主な資格はこちら。
・シンガポール市民であること ・立候補の届出日に 45 歳以上であること ・立候補の届出日に選挙人名簿に選挙人として登録されていること ・立候補の届出日までに合計して 10 年以上シンガポールに居住している者 ・立候補の届出日に政党員でないこと ・公職経験の場合は、大臣・裁判長などの重要職を3年以上経験 ・民間経験の場合は、過去3年間の平均株主資本 S$5億以上の企業で経営トップの経験があること など。 |
さらに、2016年、憲法改正により追加された項目がこちら。
・過去5回の選挙で大統領を出していない民族(中華系、マレー系、インド系・その他)が あった 場合は、その民族出身者であること |
多民族国家のシンガポールらしい、民族の公平性を期した憲法ですね。マレーシアから独立した理由の一つが「マレー人優遇政策」だったことを考えるともっともな法改正なのかもしれません。これにより 2017 年大統領選挙では、過去5回の選挙で大統領を出していないマレー系のハリマ・ヤコブ氏が無投票での選出となりました。
シンガポールの大統領の権限や役割は?
シンガポールの大統領国家元首であり、任期は6年。もともとは儀礼的な存在としての役割のみでした。しかし1991年以降の法改正後は、大統領顧問会議(Council of Presidential Advisers,CPA)の助言を受けながら、下記のような政府の予算や重要な人事に拒否権を行使する権限が限定的に与えられています。
・シンガポールの政府準備金に関わる全ての財政問題 ・公的サービスおよび政府系企業における重要な任命に関するすべての事項 ・宗教調和維持法に基づく拘束命令 ・治安維持法に基づく継続的な拘留 ・汚職行為調査局による調査 |
大統領の決定がCPAの助言に反する場合、議会は3分の2の多数決をもって大統領の決定を覆すことができます。
そもそも大統領は国の象徴として式典や国際的な場でシンガポールを代表する存在でしたね。もちろん、国会の開会宣言、宣誓行事に参加したり、諸外国への表敬訪問を行ったりもします。またボランティア活動、社会起業家精神、スポーツ、文化、芸術など、様々な分野で積極的に地域社会との関わりを持ち、シンガポールの国民を応援しているのです。
大統領官邸イスタナを見に行こう
イスタナのオープンデーは年たったの5回
シンガポールで最も古い歴史遺産の一つと言われるイスタナ(マレー語で「宮殿」の意味)は1869年に当時の植民地知事に建てられ、それ以来植民地時代は歴代知事の官邸として、独立後は大統領官邸として使われています。1990年代に大規模改修が行われ、現在では6つの多目的室が式典や外国人の要人・賓客を迎えるために使われています。
オープンハウスが開催されるのは年にたったの5回。旧正月、レイバー デー、ハリ ラヤ プアサ、ナショナル デー、ディパバリの祝祭日のみです。オープンハウスの日はフェイスペイント、サンドアートのワークショップが開催されたり、広大な芝庭園でピクニックをしたりとたくさんの人で大賑わい。大統領夫妻がサプライズで参加することも!本館では世界各国の王族や国家指導者たちにちなんだ逸話を部屋ごとに知ることができます。また、シンガポールの大統領や首相に送られた各国からのギフトの特別展示など、国同士の友好関係も垣間見ることができます。
この日は記念のグッズも販売されます。収益は全てPresident’s Challengeが支援するチャリティー団体に寄付されます。イスタナ創立150周年記念書籍、帽子、マグ、しおり、ポストカード、ノートや傘など、せっかくの記念に見てみたいですね。
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イスタナ ヘリテージ ギャラリーは年間を通じてオープン
イスタナの通りをはさんで向かいにあるイスタナ ヘリテージ ギャラリー。ハリマ・ヤコブ大統領がシンガポール国民にとってイスタナを身近にしようと、2016年にオープンしました。ギャラリー内では植民地時代から現在に至るまでのイスタナの変遷、国宝、美術品、外国の要人からのギフトなど、さまざまな文化遺産が展示されています。
コロナ禍で一時期閉鎖されていましたが、公式ホームページの記載によると2022年3月からは再度オープンしているようです。
Istana(イスタナ) 住所:Orchard Road, S238823 メールアドレス:istana_feedback@istana.gov.sg WEBサイト |
※新型コロナウイルスの感染状況次第で営業状況が変更になる可能性があるため、訪問前は公式HPを確認するか直接お問い合わせいただくことをおすすめします。
シンガポールの政治や大統領について知っておこう!
独立国家として歩み始めたシンガポールは今年で57年を迎えます。偶然にもナショナル デーももうすぐ。せっかくなのでこれを機にシンガポールの多民族国家ならではの政治体制や大統領のあり方をさらに深掘りすべく、イスタナのオープンデーなどに足を運んでみましょう!観光名所も政治的背景を知っているとなお楽しいものですよね。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
この記事を書いた人
SingaLife知りつくし隊
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