どう違う?シンガポールの年金事情!年金加入の条件や受け取り方法をわかりやすく解説!
やっぱり気になる老後のお金!都市国家シンガポールの年金事情は日本と比べてどのように違うのでしょうか?その加入の条件や受け取り方法、日本帰国後に受け取りは可能なのか?などの気になる年金事情のあれこれをわかりやすく解説します。
シンガポールの年金制度(CPF)とは?
シンガポールには日本のような公的な年金制度や国民健康保険がなく、それらの代わりに政府が管理しているものを【Central Provident Fund(中央積立基金)】、略して【CPF】と、呼ばれています。
わかりやすくいうと、CPFは政府が行う国民のための強制積立金で、それぞれの収入から計算された金額を、就労者(対象者)、そして雇用側の両方が負担して積み立てます。こうして積立てられたお金がシンガポールの国民の老後の備えとなる仕組みです。
CPF制度の対象者となると、まずは3つのCPF口座が開設されます。
・Ordinary Account(OA):住宅購入費、投資、教育費 ・Special Account(SA):老後の年金、定年退職後の金融商品のための投資 ・Medisave Account(MA):入院費、医療費 |
そして、55歳になると年金の引き出し用に自動的に4つめの口座が追加されます。
・Retirement Account(RA) |
それぞれの口座における金利が、OA2.5%、SA4%、MA4%、RA4%となっており、銀行に預けるよりも比較的高い利率でCPFの運用がされているのもメリットのひとつです。
シンガポールと日本の年金制度はどう違う?
世界各国の年金制度を調査・評価しているマーサーのグローバル年金指数ランキングでは2022年の調査でシンガポールが世界で9位、アジアでは断トツの1位を獲得しています。ちなみに日本は35位、アジアでは4位の結果となっています。
ランキングで見るとその差は歴然ですが、シンガポールの年金制度と日本の年金制度、内容や仕組みはどのような違いがあるのでしょうか?
賦課方式の日本、積立方式のシンガポール
日本は賦課方式という仕組みで年金の制度が成り立っています。賦課方式とは、年金受給者に給付される年金は、その支給時の現役世代が納めた保険料から支払われている仕組みのことです。
この賦課方式は経済変動に強いことで採用された仕組みで、将来急な物価の上昇などがあった時でも、その時の現役世代の生活水準に合わせた保険料から年金が支払われます。そのため、年金受給者にとっても生活を安定させやすいというメリットがあります。
一方、シンガポールではCPFによる積立方式が採用されています。自分が現役世代の時に納めたものと、雇用側が納めたものが、年金受給時期になると受け取れます。
メリットとしては自分が積み立てた金額よりも受給金額が少なくなることはなく、その残高もインターネットで確認することができるというシンプルでクリアな仕組みです。
インフレに強い日本の年金制度とは逆で、物価の上昇があった場合には生活に影響は出てしまいそうですが、今後少子化が進んでも年金の受給額が減額されることはないという理由から、マーサーの年金指数ランキングでは持続性が高い制度と評価されているようです。
受給開始時期も違う!
年金の受給開始時期も日本とシンガポールでは異なります。
日本では年金の受給開始は原則65歳とされています。また、60歳から65歳の間に前もって減額された年金を受け取る「繰上げ受給」や、反対に受給開始を遅らせて66歳から75歳の間に増額された年金を受け取る「繰下げ受給」を自分のライフスタイルに合わせて選ぶこともできます。
一方、シンガポールでは原則55歳になった時に年金を引き出すことができるようになります。ただ、55歳未満でも、住宅の購入やローン、子どもの教育費、入院などの医療費、政府が定めた投資商品への投資などの目的の場合には積み立てた年金を前もって引き出すことができます。
シンガポールの年金に加入する条件は?PR保有者とは?
シンガポールの年金制度(CPF)に加入するには、定められた収入のあるシンガポール国民、またはシンガポール永住権の保持者であることが必要です。そして、このシンガポール永住権(Permanent Resident)のことをPRと呼びます。また、就労ビザであるEP(Employment Pass)を持っているだけではCPF対象外となり、加入はできません。
日本に帰国したら積み立てたCPFはどうなる?
CPFの積立期間に関わらず、シンガポールでCPF制度を利用して積み立てたお金は、PRを返上した時点でCPFの金利による運用は止まってしまいます。
それまで積み立てた残高は、受給開始の55歳未満でも全額引き下ろしが可能になります。手続きの楽な帰国前の現地にいるうちにCPF口座に入っている金額を他の自分の銀行口座に移動させておきましょう。また、その際はCPF口座の解約も忘れずに!
一方、帰国後にそのまま日本に住み続ける場合は日本の社会保障制度への加入が必要となり、国民年金、もしくは厚生年金保険の納付が始まります。帰国後に住所をおく市区役所・町村役場国民年金の窓口へ行き、早めに手続きを済ませましょう。
日本では老後2,000万円問題。シンガポールの老後はいくら必要?
2019年、「65歳以降30年間生きるには約2,000万円の資金が必要」と金融庁の報告があったことから老後の資金に置いて不安が募る日本ですが、シンガポールではなんと安定した老後の生活を送るには約1億円が必要と一般的に考えられています。
CPFの積立方式での老後資金の準備を採用しているシンガポールでは、シンガポール政府が予想以上に早い発展を遂げたことでかつては高金利で運用できていたCPFも徐々に金利が下がってきており、55歳時に受け取れるCPFが目減りしているのも事実・・・日本と同様にどんどん長くなる平均寿命によって老後に必要なお金も多く必要になってきます。
CPFを最大限に利用するために
自分で積み立てたお金を、老後は自己責任で運用していかなければならないシンガポール。シンプルでクリアなお金の仕組みではありますが、その分早いうちからの資産運用や将来設計、自己管理が大切になってきます。考え出すとついつい不安になりがちな老後のお金と生活ですが、今ある制度をしっかりと理解して利用していくことが、明るい将来を迎えるポイントになりそうです。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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この記事を書いた人
SingaLife知りつくし隊
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